• 明倫国際法律事務所

コラム

COLUMN

ロシア丸亀製麺フランチャイズ契約解除に見る フランチャイズ契約のポイント

国際ビジネス

2022.04.21

執筆者:弁護士・弁理士 田中雅敏

 ウクライナとロシアとの間の戦争は、私たちにとっても他人ごとではなく、また人道的な観点からも心の痛い話題です。一刻も早く、平和に暮らせる世の中が戻ってくることを祈らずにはいられません。
 
 ところで、最近では、日本企業も、海外でフランチャイズ契約を締結して飲食店やレストランを展開することが多くなりましたが、これに関するトラブルも増えており、私たち弁護士もそうした相談を受けることが増えています。
 今回のロシア問題に関しては、皆さんもご存じのとおり、欧米や日本の企業は、ロシア投資を引き揚げ、店舗の閉鎖などを行っており、フランチャイズ形態での進出企業も、その例外ではありません。
その中で、「丸亀製麺」の店舗閉鎖の話をお聞きになった方も多いのではないかと思います。

 丸亀製麺は、ロシア国内に7店舗を展開していましたが、2022年3月末までにこれら全店舗を閉鎖してロシア事業から撤退したと発表しました。これらの店舗は、丸亀製麺の直営ではなく、フランチャイズ店舗であり、事業主体はロシア企業であって、そのロシア企業(フランチャイジー)が、丸亀製麺(フランチャイザー)から商標等の使用許諾やノウハウの提供などを受けて経営をしていたものです。したがって、丸亀製麺の「閉店」は、正確には、「フランチャイズ契約を終了し、丸亀製麺の商標とノウハウを使用した店舗を閉鎖した」ということになります。
 しかし、丸亀製麺の各店舗が、契約終了後も、引き続きうどんレストランとして営業を継続しており、「マルガメ」という表記ロシア語の表記を「マル」に変えて、什器や備品、システム、原材料等はそのまま使用しながら飲食店として営業を継続していると報じられています。これに対し、丸亀製麺側は、フランチャイズ契約終了後の名称使用及び類似営業は認められておらず、フランチャイズの終了合意にも違反するので、事実関係を調査中であるといった趣旨のプレスリリースをしていると報道されています。
 直接フランチャイズ契約書を確認したわけではありませんが、報道によれば、フランチャイズ契約終了後の類似営業は禁止されているとのことですから、事実であれば契約違反となります。
 通常、私たちがフランチャイザー(今回では「丸亀製麺」側)の立場で契約書を作るときは、契約終了後には、同種及び類似の営業を一定期間行わない旨の約定を入れます。なぜなら、フランチャイザーから提供を受けたノウハウを使って店舗やメニュー、店舗オペレーションを構築し、利益が上がり始めたらフランチャイズ契約を破棄して、似たような名前で同じレストランをやられてしまうと、フランチャイザー側としては、ノウハウをタダで渡してしまっただけという結果になってしまうからです。
 しかし、このようなフランチャイズ契約終了後に類似の事業が勝手に行われてしまうというトラブルは、国内/国外を問わず、しばしば発生します。これは、フランチャイジーの立場から見れば、当然ともいえるかもしれません。なぜなら、フランチャイジーとしては、多額の費用などの初期投資をして店舗を開設したのに、急に契約が終了したからこれらを全部廃棄して0にしてくださいと言われても、納得できないからです。また、納得できないというだけでなく、今後の継続的な売り上げを前提に借り入れなどをして返済計画を立てている場合も多く、その場合は、営業を継続しないと、返済ができなくなって、自社の事業が破綻してしまう恐れもありますから、そうなったら、「背に腹は代えられない」ということになります。
 このような場合、契約でしっかりと契約終了後の類似営業の禁止を規定し、ペナルティ条項などを入れたり、保証金などの没収条項を入れたりといった、様々な対策を講じることは可能です。しかし、このように「力ずくで押さえつける」ということになると、フランチャイジー側との紛争に発展し、訴訟などになって解決が長期化することにもなりかねません。
 また、今回のように、国際契約の場合は、紛争解決が適切にできるかどうかも不透明です。通常、こういった国際契約の紛争解決条項は「国際仲裁」といって裁判以外の紛争解決機関を選ぶことが多いので、裁判と違って、「国の方針」に結論が左右されるリスクは比較的少ないと言えます。しかし、このような国際仲裁で得られた判断を各国で執行するためには、その国の裁判所で執行に必要な手続きを経なければなりません。そして、今回のようなケースでは、ロシアの裁判所が執行手続を行う際に、「仲裁判断が公序良俗に反する」などといった理由を付けて、執行を行わない可能性も十分に考えられるからです。
 そこで、こうした場合に、契約条項で縛り付けるという以外にも、フランチャイズ契約終了時に、フランチャイザーが、フランチャイジーに対し、「その設備や施設、人員を利用して行える別の事業」へのシフトを行うように求める権利と手続を規定して、フランチャイジーに、フランチャイザーと全く関係のない別の事業として継続できる余地を残しておく、ということも十分合理的な選択肢といえます。そうすれば、フランチャイジー側が「窮鼠猫を噛む」といった形で徹底抗戦してくることを抑止できる場合も多く、合理的なビジネス上の着地点を見つけられる可能性が高いと言えます。

 国際契約、国内契約を問わず、フランチャイズ契約を締結しようとするときは、①初期の負担、②お互いの責任の範囲、③非常にうまくいった場合のお互いの負担と利益、④様々な原因で店舗閉鎖となった場合の具体的な処理のイメージ、といった点をしっかり検討し、事前に合意に落とし込めるところは落とし込んだ上で、事業を進めることが必要だと言えます。
手軽に始められるフランチャイズ契約は、一方でこのように法的な紛争に発展する場合も多いので、様々な場合を想定しながら、フランチャイズ契約のスキームをしっかり作りこんでいくことが、無用なトラブルを防いで長く円満に関係を継続できる秘訣と言えるかもしれません。

  • 東京、福岡、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、ハノイの世界7拠点から、各分野の専門の弁護士や弁理士が、企業法務や投資に役立つ情報をお届けしています。
  • 本原稿は、過去に執筆した時点での法律や判例に基づいておりますので、その後法令や判例が変更されたものがあります。記事内容の現時点での法的正確性は保証されておりませんのでご注意ください。

一覧に戻る

ページの先頭へ戻る