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コラム

COLUMN

デジタル社会形成整備法による借地借家法改正

一般企業法務等

2023.02.02

執筆者:吉田幸祐

1.デジタル社会形成整備法による法改正

 「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」が令和3年5月19日に公布されました。本改正法では、行政や民間の各種手続における押印・書面に係る制度の見直しのため、48の法律が一括改正されました。

 その中において、借地借家法についても、一般定期借地権の設定手続や定期建物賃貸借の契約手続等の電子化等についての改正が行われ、令和4年5月18日に施行されました。

 以下では、借地借家法の主な改正の概要と注意点について解説します。なお、特に言及がない限り、条文の適示は借地借家法を指すものとします。

2.一般定期借地権の設定手続の電子化に関する改正

 一般定期借地権設定の特約(存続期間が50年以上の借地権を設定する場合における、①契約の更新がない旨、②建物の再築による期間の延長がない旨、③借地権者が建物買取請求権を行使しない旨のいずれかを内容とする特約。)について、改正前借地借家法は、有体物である公正証書等の書面によってされた場合に限って有効としていましたが、本改正によって、電磁的記録によって一般定期借地権設定の特約がされたときにも、その特約は書面によってされたものとみなすこととされました(22条2項)。これによって、電磁的記録によって一般定期借地権設定の特約をすることが可能となりました。

3.定期建物賃貸借の契約手続等の電子化に関する改正

 契約の更新がなく、期間の満了によって賃貸借が終了する建物賃貸借契約(定期建物賃貸借契約)についても、これまで契約締結のためには、公正証書等の書面で契約を行い、契約の際には事前に、契約の更新がなく、期間の満了によって賃貸借が終了することについて記載された書面(いわゆる38条書面)を賃借人に交付し、その内容を説明する必要がありました。

 この一連の手続きのうち、これまでも事前説明については、テレビ会議システムや電話等による遠隔での説明が可能とされてきましたが、本改正によって、電磁的記録によって定期建物賃貸借契約をすることが可能となり、定期建物賃貸借に係る事前説明書面の交付に関しても、これに代えて政令[1]で定めるところにより、建物の賃借人の承諾を得て、事前説明事項を電磁的方法により提供することができるようになりました(38条4項)。これにより、具体的には事前説明事項が記載された書面をPDF化する等の方法で電子データ化し、これを電子メールに添付して賃借人に送信するといった方法を採ることが可能となりました。

4.改正によるメリットと注意点

 上述の一連の改正によって、電子契約システム等を活用することによって、一般定期借地権の設定や定期建物賃貸借の契約手続に係る契約手続を、オンラインを介して遠隔地間で完結することが可能となりました。

 但し、事前説明事項の電磁的方法による提供については、政令で定めるところにより、あらかじめ建物の賃借人の承諾を得る必要があることに注意が必要です。


[1] 借地借家法38条4項の承諾とは、建物の賃貸人が、法務省令で定めるところにより、あらかじめ、当該承諾に係る建物の賃借人に対し同項の規定による電磁的方法による提供に用いる電磁的方法の種類及び内容を示した上で、当該建物の賃借人から書面又は電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令に定めるものによって得るものとする旨が定められている(借地借家法施行令第1項)。

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