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コラム

COLUMN

外国人を雇用する際の留意点

人事労務

2021.08.05

執筆:弁護士 安田裕明

1. はじめに

 近年、日本では労働者不足が深刻な問題となる中、2019年4月に改正入管法も施行されたことにより、外国人労働者の受入れが活発になりました。

 他方で、外国人の雇用には様々な問題を孕むことから、外国人を受け入れたいと考えつつも、なかなか雇用に乗り出せない事業主の皆様も多いかと思われます。

 そこで本稿では、外国人を雇用する際に、特に注意すべきポイントについて解説させていただきます。

2. 募集

 外国人労働者を募集するにあたっては、大きく分けて2つの注意点があります。

 まず、求人の申込みにあたっては、国籍や信条などによる差別的取扱いが法律上禁止されていますので、そのような条件を付さないように注意する必要があります。

 また、日本人の採用と同じように、事前に業務内容や労働時間、賃金等を明確にしておくことが必要ですが、募集に係る外国人が国外に居住している場合には、渡航費用の負担や住居の確保等についてトラブルになることがありますので、この点も明確にしておくことが重要です。

3. 面接

 次に、面接に際しては、応募があった外国人が採用後に従事する業務について、在留資格上問題がないか確認が必要です。この点については誤解されている方も多いのですが、在留資格があるからといって当然に日本で働けるというわけではありません。例えば、最近はコンビニ等で外国人留学生のアルバイトを見かけることが多くなりましたが、本来留学生は就労が許されておらず、入国管理局から「資格外活動の許可」を得ることで、原則週28時間以内の範囲でアルバイトができることになります。このように、在留資格によっては就労が制限されていますので、この点の確認が必須です。もしこれを怠って不法就労をさせていた場合には、不法就労助長罪として刑事処罰を受けるおそれもありますので、注意が必要です。

 また、面接では、特に日本語や英語の言語能力があるかを確認してください。日本語はおろか英語も使用できないとなれば、日常業務に支障を来すことが想定されますが、仮にそのようなことになったとしても、面接時に確認できたはずの言語能力の欠如を理由に解雇することは困難ですので、事前にきちんと確認することが必要です。

 その他、思想や信条に関する質問が許されないことは日本人の場合と同様ですが、特に外国では階級社会が存在したり、差別に対して敏感であることが多いため、差別と誤解される質問は避けるように注意すべきです。

4. 内定

 内定通知書の送付に際しては、内定条件を明確にしておくことが必要です。例えば、新たに在留資格を取得する必要がある場合には、一定の時期までに特定のビザの取得ができることが条件となることや会社が必ずしも在留資格の取得を保証するものではないことを明示しておくことが重要です。

 最後に、忘れてはならないのがハローワークへの届出です。外国人を雇用した場合には、その雇用形態にかかわらず、必ずその旨をハローワークに届け出なければなりません。届出をしなかった場合には、30万円以下の罰金が科せられるおそれもありますので、注意が必要です。

5. 結びに

 以上、外国人を雇用する際のポイントについて解説させていただきました。

 外国人の雇用は、単に人手不足の解消のみならず、多言語対応が可能になることや、日本人とは異なる観点から新しいアイデアが出るなど、様々なメリットがありますので、外国人の雇用に消極的な事業主の皆様も、今後は選択肢の一つとしてご検討いただいてもよいかと思われます。

 当事務所でも、外国人の雇用の取り組みについてはサポートさせていただいておりますので、ご不明な点等ありましたらお気軽にご相談いただければと思います。

(2020年1月 弁護士 安田裕明)

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