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コラム

COLUMN

証券化の仕組みとメリット・デメリット

企業経営・販売・広告

2021.06.30

執筆:弁護士 高山大地

1. 証券化の基本的な仕組み

 証券化とは、資金を必要とする事業体(オリジネーター)が、自ら保有する資産(原資産)から生み出されるキャッシュフローのみを裏付けとして金銭を調達する手段をいいます。具体的には、原資産を他の事業体(SPV)に譲渡し、かかるSPVから譲渡代金を受け取ります。SPVは、原資産の信用力をもとに投資家から資金を集めます。

これにより、オリジネーターは原資産をすぐに現金化することができます。また、通常のローンのように全資産を担保にして融資を受ける場合には、オリジネーターの全資産がその融資の引き当てとなり、融資が返済できなければオリジネーターは倒産しなければならなくなる一方で、証券化の場合には、投資家への元利金の返済ができなくなったとしても、失うのは原資産だけであり原資産の価値以上に元利金を返済すべき義務を負いません。

 このように、調達した資金の返済原資が限定される責任財産の限定効果(いってみれば譲渡と担保借入の中間的性質)が、証券化の最大の利点とされております。

2. SPVとは

 SPVとは、証券化において原資産を譲り受ける対象となるVehicle(事業体)のことであり、オリジネーターからも投資家からも独立した原資産の管理運用のみを目的とする事業主体です。このように、原資産の譲受人としてSPVを設けることで、オリジネーターにとっては、SPVが投資家から集めた資金の返済ができず倒産したとしてもオリジネーターは責任を負わなくてもよいという責任財産の限定効果が生じ、また、投資家にとっても、仮にオリジネーターが倒産するようなことがあっても原資産さえ正常にキャッシュフローを生じ続けていれば出資金が回収できることから、その分投資リスクを抑えることが可能となります。

 通常のスキームでは、SPVとしては信託銀行もしくは資産流動化法上の特定目的会社を利用する場合もありますが、株式会社や合同会社を利用することもあります。

3. SPVの種類

  前述のとおり、SPVを介する最大にしてかつ唯一の理由は、オリジネーターとSPVの倒産隔離を果たすためですので、倒産隔離が図られる主体、すなわちオリジネーターとは独立した権利義務の帰属主体となり得るものであれば、どのようなVehicleであってもSPVとなることができます。上記は、SPVとなる代表的な権利義務の帰属主体を挙げておりますが、場合によっては、医療法人や一般社団法人等がSPVになる場合もあります。

4.  証券化のメリット・デメリット

 証券化の目的及びメリット・デメリットは、原資産の内容に応じて様々ですが、一般的には以下のようなものが想定されております。

5. 不動産証券化の一例

 以下の図は、証券化される資産の中で最も一般的といえる不動産証券化の一例です。不動産を証券化する固有のメリットとしては、①オリジネーターは、不動産の売却代金相当額の資金を調達できる上、当該不動産を従前と同様に利用することができる点、②資金に余裕ができれば将来的に不動産を買い戻すこともできる点、③一般的には売却しにくい不動産であっても、キャッシュフローが生じる限りは証券化により売却代金相当額の資金調達が可能となる点、などがあげられます。

6. 事業証券化の一例

 不動産のほかにも、証券化可能な資産としては、貸付債権や売掛債権、診療報酬債権等の債権や、特許権、著作権、実用新案権等の知的財産権のような財産権のほか、スポンサーさえ見つかれば、会社が行っている事業そのもの(スーパーマーケットやレストラン等の一般事業や太陽光発電事業やホテル事業など初期投資に大きな金額を要する事業等)を証券化することもできます。以下の図は、事業の証券化の一例です。事業の証券化の固有のメリットとしては、①事業が将来生ずべき収益の先払いを受けることができる点、②資金に余裕ができれば将来的に譲渡した事業を買い戻すこともできる点、③事業の運営自体はオリジネーターが継続して行うので、ノウハウ等の営業機密が外部に流出することがない点、などがあげられます。

7.  まとめ

 以上の通り、証券化においては、不動産のほか、貸付債権、売掛債権、診療報酬債権等の債権、特許権、著作権、実用新案権等の知的財産権、航空機や船舶等の動産といった財産権のほか、会社が行う事業そのものも原資産として証券化することが可能です。このような資金調達に興味のある方は、ぜひ一度ご相談ください。

(2014年7月執筆)

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