明倫国際法律事務所 Meilin International Law Firm

明倫弁護士事件簿 - case002 「相続」悲喜こもごも

 広田祥子さんの兄の健介さんは結婚して奥さんと子供さんがいましたが、半年ほど前に突然心不全で死んでしまいました。健介さんは、いい人だったのですが、ギャンブル好きで借金を作っては、家族を困らせ、働き者の奥さんがパートをしながら、何とか生計をたて、健介さんの借金も返していました。健介さんの死後、奥さんと子供さんは、借金があるかもしれないということで相続放棄をしていました。

 

 そんなある日、広田さんに、サラ金業者から、健介さんの借金10万円の請求がきました。

 健介さんの妻子は相続放棄をしており、ご両親もすでに亡くなっていたため、広田さんが相続人となってしまったのです。広田さんは、最初は驚きましたが、金額も払える範囲でしたし、お兄さんに対する香典だと思って、その支払いをしてしまいました。ところが、その後しばらくして、別のサラ金業者から、健介さんの借金100万円の請求を受け、あわてて私のところに相談に来られました。

 広田さんの場合、自分が借金を相続してしまったことを知った日から3か月以内であれば、広田さん自身も相続放棄ができたのですが、すでに一度お兄さんの借金を払ってしまっていたので、「法定単純承認」となってしまい、もはや相続放棄はできない状態となっていました。広田さんは、最初の10万円の借金が分かったときに弁護士のところに相談に来ていればと非常に悔やんでおられましたが、後の祭りです。

 とりあえず、私は、広田さんから業者との交渉を受任しました。

 

 私は、健介さんには借金癖がありましたので、すでに完済になった過去の借金があるのではないかと考え、色々な調査を行った結果、健介さんには生前完済になった借金が複数あったことが分かりました。このような場合、法定金利以上の金利を払いすぎた部分について、いわゆる過払金が取り返せる場合があります。早速私もこれらの業者と交渉し、合計で300万円近い過払金を取り戻しました。

 広田さんが請求された100万円についても、交渉の結果、30万円ほどに減額してもらいましたので、これを返済しても、なお広田さんの手元には270万円もの大金が残ることになりました。広田さんにとっては、思わぬ健介さんからのプレゼントとなったのです。

 

 ところで、この場合、そもそも健介さんの奥さんは、早まって相続放棄をするのではなく、いったん弁護士に依頼して調査をしてみれば、相続放棄する必要もなく、270万円も奥さんのものとなったはずでした。この過払金も、元は奥さんがパートをしながら必死で返済したおかげで発生したのですから奥さんにはかわいそうな気がします。

 奥さんこそ、相続放棄する前に弁護士に相談するべきでした。私の依頼者の広田さんは満足されていましたが、私としては、ちょっと後味の悪い思いが残った事件でした。

 

[2011年2月 月刊はかた掲載] 

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