明倫国際法律事務所 Meilin International Law Firm

明倫弁護士事件簿 - case020 下請事業者の決意
~ 下請代金の不当な減額。下請いじめに対する対処法とは? ~

 松田さんは、当事務所に相談にいらっしゃったとき、怒り心頭に発していました。

 

 松田さんは、長年地元で衣料品の製造業を営む小さな会社の社長さんでしたが、最近初めて取引をした卸売業者A社から約束の支払日に商品代金を支払ってもらえず、材料費や従業員の給料を金融機関から借金して支払っている状態で、経営が苦しく、非常に困っているとのことでした。

 しかも、A社は、あらかじめ決めていた商品の代金について、商品を納入する度に「生地が気に入らない。」、「イメージしていたものと違う。」などと難癖をつけては減額を要求し、最終的にはあらかじめ決めた代金の7割しか支払わないなどと言い出す始末だったそうです。

 松田さんは自社で製造する衣料品の品質には自信を持っていましたし、A社に納入した商品も品質に問題はなく、A社の注文通りのものだったそうですが、今回のA社との取引は大口で、今後もA社から大口の発注があるかもしれないことを考えると反論することができなかったとのことでした。

 

 けれどもある日、松田さんは、複数の知り合いの同業者がA社から以前同じような目に遭ったことがあり、2回目以降の取引などなかったという話を聞きました。

 しかも、松田さんは、A社の卸先である小売業者で、松田さんの会社の商品が何ら値引きされることなく、A社が相当利益を乗せていると思われる金額で販売されているのを偶然目にしたのです。

 そのため、松田さんは、A社が一連の行為を計画的にやっていたことに気付き、何とか一矢報いようと当事務所に相談にいらっしゃったそうです。

 

 松田さんは、「絶対に許せません。A社を訴えましょう!」と興奮していらっしゃいましたが、訴訟は判決が出るまでに相当な期間がかかるのが通常ですので、既に経済的に苦しい状況にある松田さんの会社のためには必ずしも適切な解決手段ではないように思われました。

 そこで、松田さんと相談した結果、まずは、A社の行為が【下請法】に違反するものでないかを調査し、違反行為が発覚した場合には【公正取引委員会】に申告し、行政の迅速な対応によって、A社の対応が改善されるように働きかける方針を採ることにしました。

 【下請法】とは、資本金の規模が異なる事業者間の取引を公正にし、下請事業者の利益を保護するための法律で、下請代金の支払遅延(下請法4条1項2号)や、下請代金の減額(同項3号)は固く禁じられています。

 様々な資料を取り寄せて検討してみたところ、松田さんの会社とA社との資本金の規模は大きく異なることが判明し、また、A社の行為が下請法に違反していることが証拠上も明らかになっていきました。

 【公正取引委員会】は下請法を運用する行政機関で、下請法違反行為に対して、指導等を行うための機関です。

 私は、A社の行為が下請法に違反している旨を指摘する報告書を作成し、取り寄せた様々な資料を証拠として添えて公正取引委員会に申告しました。

 

 公正取引委員会への申告から暫くして、松田さんが再び当事務所を訪れました。

 そのときの松田さんは満面の笑みで、公正取引委員会からA社に対し指導を行った旨の報告を受けたこと、A社は松田さんの会社に対して今まで支払いを遅延させていた商品の代金を減額分も含めてすぐに支払ったことを報告して下さいました。A社がここまで対応を変えたのは、下請法上、指導に従わない場合、社名が公表される【勧告】や、刑罰である【罰金】もあり得ることを考慮したからだと思います。

 

 法律の中には下請法のように弱者の利益を守るものも存在し、紛争の解決方法は訴訟だけではなく、今回のように公正取引委員会に働きかけるなど多種多様です。

 当事務所に相談にいらっしゃる方には、どの法律を適用し、どのように紛争を解決すべきなのか、最善の方法を提案させて頂くようにしています。

 

 

[2012年9月 月刊はかた掲載] 

ご注意
本原稿は、過去に執筆した時点での法律や判例に基づいておりますので、その後法令や判例が変更されたものがあります。記事内容の現時点での法的正確性は保証されておりませんのでご注意ください。
本文中に登場する人名・店名については架空のものです。