明倫国際法律事務所 Meilin International Law Firm

明倫弁護士事件簿 - case022 嵐は突然に
~ 夫の不貞相手が判明した際に、離婚を決断せず、不貞相手から賠償金を得る物語 ~

 成美さんのご主人は飲食店経営会社の社長さんで、成美さんは店のインテリアコーディネートや経理を手伝い、夫婦仲良く、二人三脚でお店を経営していました。

 

 ところが、「嵐」は突然にやってきます。

 

 ある日、ご主人は友人とゴルフ旅行に出かけました。

 しかし、成美さんのご友人が温泉旅行に行った先で、偶然、ご主人が女性の運転する車に乗って二人で旅館に入っていくところを見てしまったのです。ご友人はすぐに気がつき、成美さんに車の写真を撮ってメールで送ってきたとのことでした。

 

 ご相談にいらした成美さんに、私は、まず、離婚を前提とした法的請求についてお話ししました。不貞を理由として離婚を請求できること、離婚時に請求できる金銭として、婚姻中に夫婦で築いた財産を清算する「財産分与」、不貞行為などによって被った精神的損害などに対する「慰謝料」、未成年の子どもについて「養育費」があること、などです。

 成美さんは、ここまでの説明を聞いたところで、はらはらと涙を流し、「浮気をされたことは悔しいですが、私は離婚したくはありません。」とおっしゃいました。「夫は真面目な性格です。きっと、魔がさしたのだと思うのです。夫と相手の女性を別れさせる方法はありませんか?」

 

 残念ながら、法律上、夫と浮気相手を別れさせる制度はありません。しかし、妻は夫の浮気相手に慰謝料を請求することができます。

 私は、成美さんから聞いたご主人の性格も考えて、成美さんが浮気相手に慰謝料請求を行い、その過程でご主人と別れてもらうように交渉することを提案し、成美さんの依頼を受けることになりました。

 ただし、成美さんには相手の女性がどこの誰なのか、全くわかりませんので、相手の身元を調査しなければなりません。

 今回は、メールの写真に車のナンバーが辛うじて写っており、私は、弁護士法上の照会制度によって、相手の女性の身元を割り出そうと考えました。早速、照会を行ったところ、車の所有者はブライダル会社であることがわかり、その会社の商業登記簿やホームページなどから、相手の女性がその会社の代表者であることもわかりました。

 私は、相手の女性に対し、成美さんのご主人と別れるとともに、慰謝料を支払えという請求をしました。相手の女性は、ふてぶてしくも、身に覚えがなく、迷惑だなどという態度でした。しかし、私が、請求に応じなければ訴訟も辞さないこと、訴訟となれば旅館にも女性と成美さんのご主人が宿泊したことがあるか調査を行うなどと述べたところ、女性は前言を撤回し、請求どおりの慰謝料を支払い、ご主人とも別れると回答してきたのです。どうやら、「永遠の愛」をプロデュースするブライダル会社の代表者が不倫で訴えられたのでは、会社へのダメージが大きいと判断したようでした。

 

 こうして、成美さんは、浮気相手とご主人を別れさせることに成功し、慰謝料を受け取ることで、少し気持ちが治まったのでした。

 なお、成美さんは、後日、ご主人にお灸を据えようと、今回のことを全て話し、離婚すると言ってみたそうです。

 そうすると、ご主人は、相手の女性から新しい結婚式場を一緒にプロデュースしてほしい、公私ともにいいパートナーになろうと言い寄られ、つい浮かれてしまった、本当にすまなかった、頼むから離婚はしないでくれ、これからも一緒に店をやって行ってくれと、成美さんに土下座をして謝ったそうです。

 ご主人は、成美さんに離婚を突き付けられ、成美さん以上のパートナーはいないことを、改めて認識したのでしょう。

 成美さんは、このご主人の態度を見て、ようやく、本当に許す気持ちになったということでした。

 

 

[2012年11月 月刊はかた掲載] 

ご注意
本原稿は、過去に執筆した時点での法律や判例に基づいておりますので、その後法令や判例が変更されたものがあります。記事内容の現時点での法的正確性は保証されておりませんのでご注意ください。
本文中に登場する人名・店名については架空のものです。