明倫国際法律事務所 Meilin International Law Firm

明倫弁護士事件簿 - case023 春来たる!
~ 商品名を決める際の商標権の側面からのポイントや、広告物を作成する場合の著作権の問題に対する正しい対応 ~

 ある年の6月ころ、私は造り酒屋のご主人である近藤さんから新商品の展開についての相談を受けました。弁護士は、トラブルになってからばかりではなく、新商品の開発のお手伝いをすることもよくあるのです。

 

 近藤さんの造り酒屋は、小さいけれど美味しいお酒を造ると地元では評判でしたが、この度、町おこしもかねて、地元の商店街とも協力し、地名ゆかりの商品名を付け、竹を使った容器に入れた商品を展開することにしたそうです。元々味には定評がありましたし、ユニークなネーミングと、竹を使ったレトロ調の容器で、お土産や贈答品として需要が見込まれていました。

 私は、まず、商品名について他人が商標登録をしていないかを調査し、問題ないという結論を近藤さんに伝えました。しかし、商標は、後から使い始めた人が出願してしまうと、先に使っていた方であっても使えなくなってしまいます。商標は、「先に使っていた人」のものではなく「先に出願した人」のものなのです。そこで、念のため、この商品名を商標出願することにし、早期審査制度を利用して9月には商標登録を完了しました。

 

 ところが、9月から広告宣伝と実際の販売を開始したところ、突然、広告代理店に作ってもらったホームページのデザインが、著作権侵害であるので、直ちに使用を中止し、損害賠償を支払えという警告書が届いたのです。確認したところ確かに、ホームページのうちの鶴の絵と非常に似た絵が、警告書で指摘された作者のホームページに以前から掲載されていることがわかりました。

 そこで広告代理店に確認したところ、代理店がデザインを外注したイラストレーターが、つい他人のホームページの絵を少し変えて使ってしまったことがわかりました。

 このような場合には、知らなかったとはいえ、広告主体である近藤さんも著作権侵害をしたことになります。

 私は、こんなこともあろうかと広告代理店との契約書に、著作権侵害についてはすべて広告代理店が責任を持つという内容の文言を入れていました。そこで、広告代理店と著作者と私の三者で話し合いを行い、本来のライセンス料の二倍を払うことで絵の使用継続の許諾を受け、その費用は広告代理店に支払ってもらうことになりました。

 

 ほっとしたのも束の間、今度は、近畿地方のA酒造から、お酒の容器がA酒造のものと酷似しており、不正競争防止法の形態模倣にあたるので、直ちに容器の使用を中止せよという警告書が届きました。A酒造は、近藤さんの新商品がたまたま全国版のテレビで取り上げられたのを見て、すぐに警告書を送ってきたということでした。この法律では、販売開始後3年以内の他人の商品の形と同一の形を使うことは、模倣として違法になるとされています。調べてみると、確かにA酒造は、以前から竹を使った類似デザインのお酒を販売していました。

 そこで、私は、近藤さんとともに、酒販組合や老舗の造り酒屋さんの協力も得ながら、昔から竹をモチーフとした日本酒の容器は一般的であったこと、近藤さんの容器とその酒屋さんの容器とは、ディティールに違いがあることなどを主張し、交渉した結果、最終的には先方もそれ以上問題にしないということで、解決することができました。

 

 これらのすべてが無事に解決したときには、すでに12月も終わろうとしていました。この間も新商品の販売は継続していたのですが、苦労の甲斐あってか、売れ行きはとても順調で、年末までに当初の目標の3倍もの売り上げが上がりました。

 私も、お歳暮にこのお酒をいただき、新春に楽しませていただきました。苦労した分、何だか自分が作ったお酒のような気もして、その味わいは格別なものとなりました。

 

 

[2012年12月 月刊はかた掲載] 

ご注意
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本文中に登場する人名・店名については架空のものです。