明倫国際法律事務所 Meilin International Law Firm

明倫弁護士事件簿 - case025 備えあれば憂いなし
~ 会社じゃない個人の皆様も、気軽に相談できる顧問弁護士を作りませんか? ~

春野さんは、早くにご主人を亡くして一人暮らしをしていますが、以前、当事務所で遺言書を作成したときには、おしゃべり好きな明るいおばあちゃんでした。しかし、久しぶりにお会いした春野さんは、不安そうに、次のようなお話しをされました。

「私は、もうすぐ70歳ですが、最近物忘れが多いんです。自分が死んだ後のことについては、遺言書があるから安心ですが、その前に、もし認知症になったら私の生活はどうなるんでしょうか。悪徳商法にひっかかったら、誰に相談すればよいのでしょうか。」

 弁護士は、春野さんを落ち着かせながら、春野さんの生活状況について聞いてみました。春野さんは、遠方に住んでいるお子さんとは交流がないため、自分で、家政婦さんの派遣契約を締結し、家政婦さんに生活の介助をしてもらっているようです。春野さんは、ご自身で、毎月の家賃、水道光熱費、家政婦さんの派遣料金の支払を行っているようです。

 このように、春野さんは、ご自身でしっかりと生活を管理されていますが、最近物忘れが増えたことから、急に漠然とした不安が生じたようでした。

 

 当事務所からは、春野さんの漠然とした不安を少しでも解消するため、次のような提案をしました。

①    ホームロイヤー契約の締結

 ホームロイヤー契約は、会社と弁護士間での顧問契約の、個人版のようなものです。基本的には、弁護士が、随時の法律相談を受け付けることや、弁護士から、定期的な電話連絡をすることなどが内容となります。ですから、春野さんが、悪徳商法かも?と不安に思ったときに、相談する相手を探すことから始める必要はありません。

②    任意後見契約の締結

 ホームロイヤー契約は、春野さんの判断能力が十分であることを前提としています。

 今後、春野さんが心配しているように、認知症等で、春野さんの判断能力が不十分となる場合に備えて、あらかじめ財産管理等の事務を、弁護士に委託する契約が、任意後見契約です。春野さんの判断能力が不十分になった場合には、任意後見人である弁護士が、裁判所が選任した任意後見監督人のもと、入通院契約や、今後必要となる介護サービスの契約等を締結し、日常の家賃や生活費等も含め、春野さんの財産を管理します。

 

 当事務所は、物忘れが多いとはいえ、明朗に会話をする春野さんの様子を拝見して、まずは、春野さんの不安を少しずつ解消するために、ホームロイヤー契約を締結することをお勧めしました。春野さんも、説明を聞いて安心したようで、ホームロイヤー契約を締結することになりました。

 

 その翌月、弁護士が、春野さんに定期連絡の電話をしたところ、春野さんから「去年、友だちと一緒に、パソコン教室に入会したのよね。もう滅多に通ってないんだけど、そこの経営が危ないっていう噂があるの。まだまだ不景気なのねえ。」という話がありました。

 春野さんは、世間話のような雰囲気で話していたのですが、弁護士は、すぐに春野さんに対し、先払いした費用がないか確認しました。春野さんは、入会時に、一年分のレッスン料を前払いしており、半年分が未消化であるとのことでした。

 そこで、弁護士は、春野さんに、もし教室が破産すれば、未消化のレッスン料金は返金されない可能性が高いことを説明し、滅多に通っていないならば、早期に解約して、未消化のレッスン料金の返金を受ける方が安心であると説明しました。春野さんは、突然の危機感ある話にびっくりしたようでしたが、どうせあまり通っていないのだからと解約し、未消化のレッスン料金を返金してもらいました。

 その後、ある日突然教室の入口に、「破産手続開始の申立てに伴うレッスン終了のお知らせ」という通知文が貼り出され、同じく未消化のレッスン料金がある春野さんの友人は、返還請求の相談ができる弁護士を探しているとのことでした。

  春野さんは、たまたま弁護士に話した世間話が法的問題に発展し、無事未消化のレッスン料金が返金されたことに驚くとともに、感謝をしてくださいました。

 

 今後、当事務所は、春野さんと任意後見契約を締結し、春野さんをずっと見守っていく予定です。

 

 

[2013年4月 月刊はかた掲載] 

ご注意
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本文中に登場する人名・店名については架空のものです。