明倫国際法律事務所 Meilin International Law Firm

明倫弁護士事件簿 - case027 保険会社は被害者のために動いてくれる?
~ 交通事故被害者が、保険会社提示の示談案に納得できず、弁護士に相談・依頼したことにより、適正な損害賠償を獲得することができたお話し ~

 交通事故の被害に遭った田中さんが、ご主人と一緒に相談にいらっしゃいました。

 ある日の午後、田中さんは、PTAの会合に出席するため、自宅から息子さんの小学校まで自転車で向かう途中、住宅地の信号機のない交差点に差し掛かりました。ところが、交差点左側から進入してきた自動車が田中さんの自転車に衝突し、田中さんは道路に倒れ込み、鎖骨骨折や頸椎捻挫などのけがを負ってしまいました。

 田中さんは、事故現場から救急車で病院に運ばれ、そのまま入院することになりました。担当医によると、鎖骨骨折については手術の必要はなく、患部を固定して骨折部が癒合するのを待ち、リハビリをしていきましょうということでした。田中さんは、ギプスとバンドで約2か月、胸部を固定され、不自由な生活を強いられました。その後、リハビリなどを続けましたが、事故から1年が経過するころ、担当医から、これ以上の改善は見込めないと言われました。ただし、鎖骨の変形癒合などが残っていたため、後遺障害の等級認定を申請したところ、併合12級と認定されました。

 

 後遺障害等級の認定が出て間もなく、加害者保険会社から、田中さんに示談の提示がありました。

 田中さんは、保険会社がきちんとした示談案を提示してくれるものと信じており、弁護士への相談など考えてもいなかったそうです。

 ところが、保険会社は、事故の発生について、田中さんにも3割の過失があると主張しました。田中さんは、加害者が一時停止線で停止せずに交差点に進入してきたにもかかわらず、保険会社に3割もの過失相殺を主張されたため、驚いて保険会社担当者に抗議し、過失相殺の主張は取り下げるように交渉しました。しかし、保険会社担当者が自信ありげに、「田中さんにも過失がある。」というので、もう自分たちでは対処できないと思って、弁護士に依頼することにしたということでした。田中さんは、「保険会社は、事故直後は親切そうに対応してくれたし、向こうは交通事故のプロだから、ちゃんと被害者のために動いてくれるのだと思っていたのに、裏切られた気持ちです。」とかなりお怒りの様子でした。

 事故現場の状況などを聞きとって確認したところ、田中さんが無過失とはいえないものの3割もの過失があるとは言い過ぎだと思われました。また、保険会社提示の示談案を見せてもらうと、けがのためにパートや家事が出来なかったことによる休業損害、後遺障害の影響による逸失利益、入通院や後遺障害の慰謝料の額も低すぎました。

 

 田中さんからご依頼を受けた私は、まず、検察庁に申請して、この事故の実況見分調書など、刑事記録の写しを入手しました。また、事故現場に出向いて交差点の形状や見通しなどを確認し、証拠化するために写真を撮影するなどしました。入手した資料や田中さんの説明などを詳細に検討した結果、本件事故の過失の割合は、加害者9割、田中さん1割が相当だと判断しました。

 検討の結果を丁寧に説明したところ、田中さんも納得され、示談で解決できるのであれば1割の過失は認めてもよいということでした。

 過失の調査と並行して、保険会社の基準ではなく、裁判所の標準的な基準に従って、田中さんの損害額を算定し直しました。その結果、1割の過失相殺を認めたとしても、保険会社の当初提示の2倍を超える計算となりました。

 私は、保険会社担当者に事故状況に関する調査結果と損害計算の結果を示して、適正額での示談に応じるように交渉しました。保険会社は、それでも渋っていましたが、訴訟も辞さないという田中さんの覚悟を伝えたところ、最終的には私の提示案にほぼ近い金額で示談が成立しました。

 田中さんは、「本当に被害者のために動いてくれるのは、加害者の保険会社じゃないんですよね。よくわかりました。」と納得されたご様子でした。

 

 交通事故被害に遭った場合、加害者の保険会社が病院への治療費の支払などをしてくれると、保険会社に任せておけば適切な損害賠償がなされるものと思いがちです。しかし、保険会社は加害者の賠償責任を肩代わりする立場にあります。本当に被害者にとって適切な解決が図られるのか、示談をしてしまう前に、弁護士にご相談することをお勧めします。

 

 

[2013年8月 月刊はかた掲載] 

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