明倫国際法律事務所 Meilin International Law Firm

明倫弁護士事件簿 - case029 あれにもこれにも著作権?
~ 事業のIT化に際し、著作権で揉めた介護用品の販売会社の物語 ~

 木々の葉も落ちて寒さも本格的になってきたある日、介護用品の販売会社を経営する雪田さんが相談にいらっしゃいました。

 雪田さんは当事務所のホームページで私の主な取扱分野に「知的財産関連法務」とあるのを見て相談にいらしたそうで、「先生は著作権とかにもお詳しいんでしょうか?」と非常に困った様子でした。

 詳しくお話を伺ってみると、雪田さんのご相談は次のようなものでした。

 

 3年ほど前、雪田さんは事業をIT化しようと考え、知人の北村さんに顧客管理システムを組んでもらい、会社のホームページ、ロゴや名刺を作成してもらいました。その時は、北村さんも、古くからの付き合いであるし、その後の顧客管理システムと会社のホームページの保守管理料や名刺の印刷代などで継続的な売上げを得ることもできるからと言って、安い金額でこれらの仕事を請負ってくれたそうです。なお、古くからの付き合いがあったこともあって、北村さんとの間で契約書は作成しませんでした。

 ところで、2、3か月ほど前、北村さんよりも安価で名刺を印刷してくれる業者が見つかったため、雪田さんは名刺の印刷をその業者に頼むことにしました。同じころ、IT関連企業に勤めていた雪田さんの息子さんが、退職して雪田さんの事業を手伝うようになったため、雪田さんは顧客管理システムの操作や会社のホームページの更新等は息子さんに任せるようになり、顧客管理システムとホームページの保守管理も北村さんには頼まなくなりました。

 すると、北村さんは、雪田さんが名刺の印刷を別の業者に頼んだことや、顧客管理システムとホームページの保守管理を息子さんに任せたことを責めるようになりました。

 

 そして最近になって北村さんは、雪田さんに警告書を送りつけてきました。

 警告書の内容は、会社のロゴの著作権が北村さんにあることを理由に、名刺を別の業者に頼んで印刷するのは著作権侵害にあたるとして会社のロゴの使用を止めるように要求するものでした。

 それだけでなく、会社のホームページや顧客管理システムの著作権も北村さんにあるため、ホームページを無断で更新したり、顧客管理ソフトの改良をしたりすれば著作者人格権侵害になるという指摘もありました。

 雪田さんは、折角顧客に浸透してきた会社のロゴが使えなくなっては困るし、今後の事業展開に併せてホームページの更新や顧客管理ソフトの改良が出来なければIT化した意味がないと頭を抱えておられました。

 

 このような経緯を聴いた後、私は、雪田さんに方針を説明した上で、北村さんとの交渉を引き受けることにしました。

 そもそも、著作権法上は、純粋な美術の領域に属する【純粋美術】だけではなく、実用に供され、あるいは産業上利用されることが予定されている【応用美術】も、著作物として保護の対象となりえます。ただし、この【応用美術】については、鑑賞の対象として認められる一品製作のものを除き、原則として著作物としては保護されないとされています。そして、ロゴはこの【応用美術】に当たる上、誰もが使う文字について特定の人が著作権を有することは不当であることから、特別な美的創作性がない限り著作物とは認められないという考え方があります。今回のロゴは雪田さんの会社の名前を少し装飾した程度でしたので、特別な美的創作性がなく、著作物とは認められない可能性が十分にありました。

 また、顧客管理ソフトについても、雪田さんと北村さんとのメールのやりとりの中から、北村さんが雪田さんの会社にバージョンアップを認めるような文面を発見しましたので、顧客管理ソフトの改良は可能だと主張することができそうでした。

 さらに、ホームページも、画面構成が一般的で、ありふれたものである場合は、創作性がないものとされ、著作物として保護されません。今回のホームページは、雪田さんが提供した介護用品の写真が掲載され、その下に当該介護商品の客観的な性能が記載されているだけで、文字や背景にもフリー素材が利用されていましたので、その画面構成が一般的で、ありふれたものだと主張することができそうでした。

 私は、以上のような事情を交渉材料にして北村さんと交渉し、最終的には雪田さんの会社がロゴ等を自由に使用することができる代わりに、北村さんに少額の解決金を支払うことを内容とする合意書を交わして紛争を解決しました。

 雪田さんも、北村さんが継続的な売上げを見込んで安くロゴ等の作成を請負ってくれたことは分かっていたので、解決金を支払うことを納得してくださり、少額を支払うだけで訴訟にならずにロゴ等を自由に使用することができてよかったと満足してくださいました。

 

 著作権は様々なものに発生するおそれがありますので、権利関係を事前に契約書で明確にしておくことが肝心です。

 著作権関係で不安のある方は、是非、知的財産関係事件を専門的に取り扱う弁護士にご相談いただければと思います。

 

 

[2013年12月 月刊はかた掲載] 

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本文中に登場する人名・店名については架空のものです。