明倫国際法律事務所 Meilin International Law Firm

明倫弁護士事件簿 - case035 パートナーシップという選択

 私の高校時代からの友人の宮﨑君は、今でも飲み仲間で、月に一回は中洲に飲みに行く仲です。そんな宮﨑君から相談(といっても飲み会の中の雑談でですが)されたのは、3年前のちょうど今頃でした。

 

「おれの会社の後輩が脱サラして事業することにして、おれも一緒にやらないかって誘われたんだけど、さすがに脱サラまでは勇気がなくてね。ただその後輩はかなり優秀で、きっと成功するだろうし、とりあえず出資はしてやることにしたんだ。ある程度事業が軌道に乗ったらおれも会社辞めて一緒にやってもいいしな。」

 宮﨑君の会社はネット通販の会社で、その後輩の小林君が言うには、ネット通販は初期投資もほとんど必要なく、ネット通販のノウハウは掴んだし、おもしろい商材も見つけたので、自分でやった方がもうかるはずだ、とのことのようです。

 

 新規事業や投資の話は私の専門分野の一つ。もちろん根掘り葉掘り聞きこんで、問題点を検討します。私は宮﨑君に、投資スキームはどうするつもりなのか聞きました。宮崎君は逆に私に聞き返しました。

「えっ、スキーム?普通に小林君が株式会社を作って株主として出資するだけだけど、それ以外に何か方法あるの?」

 まぁこれが一般的な人の感想だと思います。私は、事業に出資する際のスキームについて、主に会社形態にするかパートナーシップ形態にするかがあり、その中でもそれぞれいくつか取り得る選択肢がある旨、及びそれぞれの違いを説明しました。

 

 別表を見ていただければわかると思いますが、これらのスキームのどれを採用するかによっていろいろ違いがあるのがわかっていただけると思います。細かい専門用語の説明は割愛させていただきますが、もっともわかりやすい違いは、設立費用と税金です。

 会社形態の場合には、定款の作成や登記をしなければならない関係で、設立費用がかかります。また、税金もまず会社の利益に対して法人税等が課税された後、出資者に対する配当の際にも、当該配当に対して所得税が課税されますが、パートナーシップの場合には、組合段階での課税はされず、所得税のみの課税だけになります(このような税効果をパススルー課税といいます)。従いまして、出資者の年収が1200万円を超えるような高額所得者でない限り、会社形態の方が税金が高くなります。これは出資者の年収が低ければ低いほど差が出てきて、設例(末尾※参照)の場合には、その差は何と年間で約40万円にもなります。

 

 私は、宮﨑君に、会社形態では設立費用と税金に大きな違いが出ること、パートナーシップ形態は、海外ではLLP(リミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ)等とも呼ばれ、かなりメージャーな形態であることも説明し、パートナーシップにしてはどうかと提案しました。

 

 その後、宮﨑君は小林君と私も交えていろいろ(中洲で)相談し、結局匿名組合形式で事業を行うことになりました。今では事業が当初の計画以上にうまくいっているようで、計算すると節税効果はかなりのものになりました。

 

 この件は、高校の友人ということで事務所を通さなかったので正式な報酬はもらっていませんが、彼らの気持ちということで、彼らと飲むときの中洲での飲み代は全部彼らがもってくれることになり、旧友(宮﨑君)と新しい飲み仲間(小林君)に感謝されながら飲む中洲での時間は、私にとって何よりの至福の時間になっています。

 

(別表)

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※①出資総額3000万円、②事業全体の利益が1000万円、③出資者の持分が20%、④出資者の当該事業以外からの収入にかかる課税所得が400万円、の場合で、会社の場合は法人税等及び個人所得税合算。本項執筆時点(平成26年11月)の実効税率による概算。

 

 

 

[2014年12月 月刊はかた掲載] 

ご注意
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本文中に登場する人名・店名については架空のものです。