明倫国際法律事務所 Meilin International Law Firm

明倫弁護士事件簿 - case015 いざ海外へ、その前に!
~ 海外企業と取引する前の基本的なリスク対策と取引相手や取り決め事項を調査する必要性 ~

 斉藤さんは、アパレル販売の会社を経営しています。

 国内での販売業績も順調だったので、中国進出を計画し、まずは上海で市場調査やアパレル販売会社への営業を行いました。その結果、品質や機能性の点から自社の販売するストッキングが売れるという見通しを立て、上海の会社へ輸出したいと考えました。そこで、上海の商談会で知り合ったA社とB社に取引先候補を絞ることにしました。そして、いよいよ具体的な契約を結ぶという重要な段階に差しかかり、初めての中国の会社との取引でもあり、漠然とした不安を抱えていたため、当事務所に相談が持ち込まれたのです。

 

 斉藤さんの話によると、A社とB社の社長さんとは上海で会っていただけで相手の会社の実態を詳しく把握されていませんでした。また、斉藤さんが日本へ戻った後のやりとりは、日本語ができる相手会社の中国人従業員と電話やメールでなされているだけとのことでした。
 斉藤さんに、まず相手が信用できるか、しっかりと代金が回収できるか、もっと調査が必要である旨をお話しし、当事務所は契約書作成業務とあわせて取引を始める前の調査業務もご依頼いただくことになりました。

 まず、私は、「工商行政管理局」という中国の行政機関に登録されているA社とB社の会社情報を確認しました。さらに、提携関係にある中国の法律事務所とも協力して、両社の会社の設立時の申請書類や定款、財務状況が記載された年度検査報告等、より詳細な会社情報を入手しました。また、調査を進めていくと、相手会社の信用等級、訴訟状況、代表者の個人情報(経歴、学歴等)まで知ることができました。

 

 その結果、A社は、実は代金不払により多くの訴訟が提起され、経営的にも破綻寸前であること、また社長には詐欺罪の前科があることがわかりました。他方、B社は、経営状態は優良で訴訟件数も少なく、多くの日本企業と取引をしており社長もしっかりとした経歴があることがわかりました。

 このような調査結果をもとに作成した報告書を斉藤さんにお渡ししたところ、斉藤さんはA社との取引はリスクが高いと判断し、B社とのみ契約締結交渉をすると決めました。

 

 B社は当初斉藤さんに過大な割引や商品納品後の代金支払いを要求しました。私は、一定の取引数量を満たせば相手方の割引に応じるという条件を提示してみることや、海外輸出案件で初めての取引相手に対して何の担保もない代金後払約束はリスクが高く、原則として断るべき等、具体的なアドバイスを継続的に行い、最終的に満足できる契約内容に落ち着き、当事務所が作成した契約書を取り交わしました。この契約書についても、実際の輸出入や営業をするには、事前に行政機関への届け出なども必要ですので、それらの処理も、滞りなく済ませました。
 

 このようにして、斉藤さんは、順調に輸出を開始し、売り上げも堅調に伸びていきましたので、最終的には自己資本のみで中国に会社を設立し、今ではストッキングだけでなく、高品質で機能性の高い日本製の衣料品を幅広く製造・販売しています。この過程でも、私は、中国の提携法律事務所と協力して、必要な契約関係の処理や売掛金回収、労務対策などを行っていきました。

 斉藤さんは、先日、今では国内より中国の方の売上数量が多くなったとのご報告に当事務所を訪れました。

 「中国に来ると本当にびっくりすることばかりで大変ですが、その分やりがいもあって楽しいですよ。」と笑顔で言われたことがとても印象的でした。

 

 中国に限らず海外の相手と取引する際には、相手企業の調査や、取引・送金に関する行政規制の調査と対応、さらには紛争に備えた対策といった様々な点について、十分なリスク管理を行う視点がとても重要です。もちろん、国内取引と異なる問題もたくさん潜んでいます。
 このような問題に事前に対応するためにも、海外進出、特に九州に近いアジアへの進出を考えている方はぜひ当事務所までご相談されてください。

 

[2012年4月 月刊はかた掲載] 

ご注意
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本文中に登場する人名・店名については架空のものです。