明倫国際法律事務所 Meilin International Law Firm

明倫弁護士事件簿 - case024 雪解け間近
~ 会社の資金繰りの危機を、破産や民事再生をせず、弁護士による交渉で乗り切った中小企業の物語 ~

 林さんは、建築資材メーカーの二代目社長です。

 林さんは、不況にあえぐこの業界での生き残りをかけて、新製品の研究開発にも熱心に取り組み、ようやく商品化のめども立ってきました。

 ところが、あと一歩で長年の努力が実を結ぶという段になって、取引先の連鎖倒産が起こり、会社の資金繰りが急に厳しくなりました。もっとも、林さんは、過去に何度か訪れた危機も銀行の支援で乗り切ってきた経験があったので、新製品の商品化のめどが立った今、追加融資を受けることはそれほど困難ではないと考えていました。ところが、会社の窮状を正直に訴えた林さんに対して、銀行は、追加融資を了承しないばかりか、現在の短期借入については、次の借り換えにはそのままでは応じられないと伝えてきました。

 林さんは、そんなことになれば会社は直ちに倒産すると慌て、当事務所に相談に来られました。

 

 林さんの話を詳しく聞くと、取引先の倒産だけでなく、これまでの多額の有利子負債の返済が会社の財務状況を圧迫し、経営体力を奪っていることがわかりました。そこで、安易に借り入れを増やすのではなく、負債を整理しつつ、新商品の商品化資金を、新株発行等資本で調達する方法をご提案しました。

 

 まず、私は、取引先の住宅メーカーであるA社に資本参加をお願いすることを勧めました。

 その結果、A社は、林さんの会社の新商品に非常に興味を持っていたので、林さんの会社の負債がカットされ、新商品をA社が独占的に販売できるのであれば、林さんの会社に出資をして新商品の商品化資金を提供してくれそうだということがわかりました。

 

 次に私は、銀行との間で負債のカットの交渉を行うことにしました。

 銀行との交渉のため、まずはA社との間で、「負債のカットが実現すれば、出資に応じる」旨の基本合意書(LOI)を締結し、また、林さんの会社の人員整理や営業の外部委託への切り替えなどの徹底した経費削減案を作成して、銀行に交渉を申し入れました。銀行の担当者には、あくまで法的整理ではなく、負債の返済交渉であることを十分に説明し、当事務所と提携する税理士の協力も得て、説得的な返済案と事業計画を策定しました。

 当初は、銀行が、5年以内の債務超過解消、7年以内の貸付全額返済にこだわったため、交渉は難航しました。しかし、最終的には、A社に対する将来の売掛債権等の債権について、集合債権譲渡担保を設定することを前提に、事実上の負債の一部カットと、遅延損害金のカット、さらに負債の長期分割支払いを承認してもらいました。

 このような交渉では、弁護士、税理士、林さんが協力して、頻繁に銀行に説明に出向き、かつ、約束したことは実行するという誠実な対応を繰り返しながら、信頼関係を作っていくことが重要です。私も、このような交渉を辛抱強く行いましたが、もっとも大変だったのは、毎月胃の痛くなる思いをしながら、数字と向き合い、従業員や事業と向き合った林さんだと思います。

 

 何とか銀行との合意が成立し、そしてA社からの出資を得られた直後、林さんが事務所にいらっしゃいました。

 林さんは、少し痩せはしましたが、二代目社長の甘さが消え、むしろ精悍で頼もしい顔つきになっていました。林さんのお話では、この苦難を一緒に乗り越えた従業員たちも一つにまとまり、社内の雰囲気も良くなったそうです。ちょうど金融円滑化法の期限が切れると中小企業の倒産が続出するだろうという噂が流れだしたころでしたから、林さんとしても、本当に後顧の憂いなく、仕事に没頭できると喜んでいました。

 

 「金融円滑化法」の問題は、日本経済全体の問題でもあります。当事務所には日本経済を治療するほどの力はありませんが、まずは当事務所のクライアントが安心して事業に専念できるよう、ファイナンス面でも、しっかりと支えていきたいと思います。

 

 

[2013年2月 月刊はかた掲載] 

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