明倫国際法律事務所 Meilin International Law Firm

【ベトナム】 ベトナム投資法、企業法の改正について [前編:投資法] (2019.7.16up)



 現在、ベトナムでは、日系企業を含めた外資企業及びベトナム内国企業の投資活動、企業活動に直接的な影響を与える投資法、企業法の改正する効果を有する、「投資法、企業法の規定を修正、補充する法律」が今秋の国会での成立が予定されている。その2019年6月19日版のドラフト(草案)が、主管官庁である計画投資省のウェブサイトで公開されており、一般からの意見聴取に供されている。このドラフトを仮和訳したので、その主要な内容を報告する。

 なお、これはあくまでドラフトであるので、今後、計画投資省ウェブサイトで公開されるドラフトが更新されることもありうるし、さらには国会にて諸々の修正が入る可能性が高い。ゆえに、実際の立法内容と本ドラフトの内容が異なるであろうことには留意されたい。しかしながら、さらなる修正が加えられるとしても、ベトナムが検討している投資法、企業法改正の方向性は推知可能であり、その意味で日系企業、日本のベトナム法研究者の皆様にとって有益と考えるので、ここにその主要な内容、及び本ドラフト全文の仮和訳を紹介したい。

 

第1 投資法

 本ドラフトにおいて、日系を含めた外資企業に最も大きな影響を及ぼす可能性があるのは、外国投資家に対する、新たな投資条件の創設である。これは、3で後述するように、外国投資家が、一定の市場にアクセスすることにつき条件を付すもののようである。同時に、既存の条件付経営投資分野が17削減されているとはいえ、この新たな条件が最終的に国会で承認されて新しい投資法の内容となれば、外資系企業に対する新たな障壁になりうる可能性があると思われる。今後の展開を注視する必要がある。主要な修正の詳細は以下のとおり。

 

1.官民パートナーシップ(PPP)契約への適用廃止(1条1項、同35項)。

 現行投資法は、インフラ建設、運営、公的役務供給等に関して、ベトナム国家機関と民間企業とが契約して上記プロジェクトを実施するPPP契約による投資につき規定を有している(現行投資法27条)。しかし、本ドラフトではPPP契約は投資法の適用範囲外である、としている。別の特別法等での規定を予定していると推測される。

 

2.決定ではなく承認されることになった投資方針(1条2項、同34項)

 現行投資法では、投資方針は、政府首相、省級人民員会などによって決定(quyết định)されると規定されているが、本ドラフトでは投資方針はそれら国家機関によって承認(chấp thuận)されるものになった。現行法下においても、投資家が実施を予定する投資プロジェクトの詳細文書を国家機関に提出し、それを国家機関が審査して“決定”していた。しかしながら、その実態は国家機関が主体的に決定するというよりは、投資家から提出された書類を審査して当該投資プロジェクトの実施を認めるか否かの判断にあるはずである。ゆえに、この実態に即して、“決定”ではなく“承認”の文言を使用したと考えられる。

 

3.外国投資家に対する条件付市場アクセス分野・業種(ngành, nghề tiếp cận thị trường có điều kiện đối với nhà đầu tư nước ngoài)の新設(1条7項)

 本ドラフトでは、従来の①経営投資禁止分野・業種、②条件付経営投資分野・業種に加えて、外国投資家に対する条件付市場アクセス分野・業種なるものが新設されている。ドラフトの文言からこの内容を正確に読み取ることは難しいが、その条件は、経済組織内における外国投資家の定款資本所有比率条件、投資形式に関する条件、投資活動範囲に関する条件、投資家の能力;投資活動実施参加対策に関する条件、法律、法令、投資に関する国際条約が規定するその他の条件から構成されるという。内容の程度はともかくとして、外国投資家による投資に対する新たな障壁が作られると解することが可能であろう。

 また、「政府はこの条の詳細を規定する」との項もあり、これは、本法成立後に、政府がこの条を詳しく案内する議定(政令)を発行することを意味する。つまりは、その議定(政令)が制定されるまでは、改正投資法が成立・施行されたとしても混乱が続く可能性がありうることを示唆している。

 

4.条件付経営投資分野・業種の変更

 本ドラフト別表によれば、これまで条件付投資分野・業種であった物流事業、宿泊事業、広告宣伝事業など17の分野・業種が条件付でなくなる。一方で、漁船点検、海外メディア、保険仲介に関する事業の3業種が、条件付経営投資分野に追加される。

 

5.投資プロジェクト内容変更が可能であることの明記(1条20項)

 現行投資法では、投資登録証明書の内容変更(調整)に関する規定があったことから、文言上は、投資プロジェクトの内容変更(調整)が可能であると推測ができるにとどまっていた(現行投資法40条)。本ドラフトでは、投資目標、投資場所の変更、投資額の増加、プロジェクト期間延長などがあった場合の投資プロジェクト自体の内容変更(調整)が可能であることが明記されている。

 

 

(以下、[後編:企業法]へ続く。)

 

(2019.7.16up)