【ベトナム】ベトナム企業法改正[後編]  (2020.8.1up)



[ベトナム企業法改正前編からの続き]


4.ガバナンスに関する改正


 ガバナンスに関し、改正企業法は、有限責任会社及び株式会社のいずれにも共通する項目として法定代表者に関する改正を行い、また、二人以上有限責任会社においては社員総会運営、株式会社においては主に株主総会及び株式の取扱いに関する改正を行っている。


(1)法定代表者


 有限責任会社及び株式会社の法定代表者については、旧企業法において、定款で法定代表者の人数、権限及び任務等を定めるものとされていた(旧企業法13条2項)。改正企業法はこれに加えて、当該企業の定款で法定代表者の権限等を具体的に定めていない場合の法定代表者は、当該企業につき十分な権限を有しているものとする(改正企業法12条2項)。そのため、特に二人以上の法定代表者を定め、かつ内部的な権限分掌を行っている企業は、定款の見直しの検討が必要となる。なお、内部的には法定代表者の権限を制限するものの、定款への記載が不十分である場合は、法定代表者の行為が企業に帰属した結果生じた企業の損害について、各法定代表者が連帯して、企業に対し賠償する責任を負う。

 

(2)二人以上有限責任会社


 二人以上有限責任会社では、旧企業法上、社員11名以上の場合、監査役会の設置義務があった(旧企業法55条)。改正企業法では当該規定が削除され、監査役会は定款による任意の設置となり、監査役会の員数を1名から5名とし、任期は5年で、重任可としている。なお、監査役が1名の場合でも監査役会を構成できるものの、この場合は当該監査役が監査役会会長となり、監査役会会長基準を満たす必要がある(改正企業法65条)。当該基準は改正企業法168条2項に定められ、定款で定めるほか、会計監査会長は、経済、金融、会計、監査、法律、経営管理、企業ビジネス活動に関連する専門分野のうち、いずれかの大学における学位以上の資格が求められる。
 その他社員総会運営につき旧企業法下では、社員総会議事録を有効に成立させるため、議事録作成者と議長の署名等が必要とされていた(旧企業法61条2項e))。ところが、実務運用上、議長に就いた社員が決議内容に不服がある場合、当該議事録への署名等を拒絶することで、事実上議事を不成立とさせる問題点が指摘されていた。改正企業法ではこれに対応するため、議長又は議事録作成者が署名等を拒絶した場合、その他の社員全員が必要事項を記載の上署名すれば、当該内容によって社員総会決議がされたこととする定めを置いた(改正企業法60条3項)。

 

(3)株式会社


(i)株主総会
 改正企業法は、株式会社における株主総会について複数の改正を行っている。旧企業法下の株主総会招集については、開催日の10日前までに株主に対する株主総会開催の通知が必要であったところ、改正企業法は21日前までへと延長された。そのため、株式会社は定款の見直しを検討する必要がある。また、改正企業法は、定款で定めることにより21日よりも短い期間の通知を許容しているため、旧企業法下と同様の運用を行おうとする企業は、10日前までの通知で足りる旨を定款で定める必要がある。
 株主総会開催の要件に関し、旧企業法下では、総議決権の51%の出席が開催要件とされていた(旧企業法139条1項)。そのため、株主間で50%ずつの割合で議決権を有する場合は、第1回の株主総会を開催できない事態(1回目の株主総会が定足数に満たない場合には緩和定足数の下再度招集を行うことができる。)も生じていたが、改正企業法では、かかる出席要件が50%に緩和された(改正企業法145条1項)。同様に、株式会社における普通決議の要件も、従来の51%から50%へと引き下げられており、書面による意見集約型決議においても、同様に51%から50%へ引き下げが行われている。これに関連して、改正企業法は、株主総会の決議につき、決議事項が当該企業の優先株式の内容についての不利益変更を含む場合、同種の優先株式を保有する株主の75%以上の賛成を要するとし(改正企業法148条6項)、優先株式を保有する株主の保護を図っている。また、改正企業法は株主総会決議事項の拡充も図っており、取締役会及び監査役会報酬の総額の決定権、内部管理規則、取締役会及び監査役会活動規則の承認、独立会計会社のリスト承認、独立会計会社の決定権限、独立会計監査人の除名を、株主総会決議に委ねることとしている(改正企業法138条)。
 その他、株主総会の延長につき、旧企業法下では、取締役の提案を受けた企業登録機関がその延長につき決定権を有していたが(旧企業法136条2項)、改正企業法では、取締役の権限に属する事項とされた(改正企業法139条2項)。

 

(ii)株式
 株式関連については、改正企業法により株式と社債の中間と考えられる預託証券の制度が新設された(改正企業法116条6項、7項)。預託証券の詳細は今後の各種証券関連法令に委ねられており、普通株式と同様の経済利益(配当)を得つつ、議決権が付与されていない純粋な経済目的での投資における活用が期待される。改正企業法では、かかる預託証券は、株式会社の普通株式数によって発行可能数が変動することが予定されており、預託証券の発行に必要となる普通株式が基本普通株式と定義されている。
  また、普通株式について改正企業法では、少数株主権の行使要件が緩和された。旧企業法下では、株式保有期間6か月以上かつ発行済普通株式総数の10%(定款で緩和が可能)を保有する株主は、各種少数株主権の行使が可能とされていたが、改正企業法115条2項等では、株式保有期間要件が撤廃され、保有比率が5%へと引き下げられた。
また確認的な意味合いになるものの、普通株主に対して企業情報の守秘義務が新設された(改正企業法119条5項)。

 

(iii)その他
 その他株式会社に関し、旧企業法下では政令によって非上場企業の債権個別引受け募集等の手続等が定められていたが、同種の内容が改正企業法128条から130条に制定されている。
 株式会社における取締役会議事録についても、二人以上有限責任会社における社員総会の改正と同様に、議長が議事録の作成を拒んだ場合において、その他の取締役の署名等により、取締役会決議を成立させることが可能とされている。

 

 

(2020.8.1up)