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コラム

COLUMN

アフター・コロナ時代のBCP

企業経営・販売・広告

2021.08.12

執筆:弁護士 池辺 健太

1 BCPとは何か?

 昨今、その重要性が叫ばれている「BCP」(Business Continuity Planning 日本語にして「事業継続計画」。)とは、自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために策定する計画のことです。

 東日本大震災、熊本地震や九州北部豪雨を経て、天災を主に想定したBCPの策定について、その関心が集まっていたところですが、新型コロナウイルスの世界的感染拡大を受け、BCPは天災だけではなく、流行病をも重点的に想定したものとするべき、という意識の変化がみられます。

2 自治体によるBCPモデル

 経産省、中小企業庁はBCPに関連するガイドラインを発表しています。また、より具体的なBCPモデルを発表している自治体も多くあり、これらを1つの参考とすることができます。

 新型コロナウイルス感染症を主な対象リスクとして意識したものとして、例えば静岡市は、「新型コロナウイルス感染症対策 事業継続計画(BCP)モデルプラン」を発表しています。また鳥取県も、「鳥取県版 新型感染症対応BCPモデル」を公表しており、他にも新型コロナウイルスを意識してBCPモデルを改定した自治体があります。これらBCPモデルは各自治体のウェブサイトからダウンロードし、参考にすることが可能です。

 また、新型コロナウイルス感染症を主な対象リスクと考えるにあたっては、各自治体が公表している、新型インフルエンザの流行を念頭において策定されたBCPモデルプランも参考になります。

 各自治体は、その土地柄を意識した内容をBCPモデルに盛り込むこともありますが、ほとんどの部分は、その土地にとらわれず、一般的に参考になるモデルとなっています。そのため、自社オフィスがある自治体が発表しているものにとらわれず、広く使いやすそうなモデルを使用し、BCPの策定や改訂の参考とすることが可能です。

3 感染症の特徴とBCP

 基本的なBCP策定にあたっての考え方は、感染症を主要なリスクと考える場合と、天災を主要なリスクと考える場合とで異なりません。事業を分析し、主要な事業の各工程におけるリスク(各工程がダメージを受ける可能性)の洗い出し、及び洗い出された各リスクの評価から、改善計画を導き出す。そして、常にそのような計画を改善していく、ということになります。

 ただし、感染症には以下のような特徴がありますので、それに注意して、BCPの修正を検討すべきです。

 感染症は天災等とは異なり、設備等ではなく、従業員等の人が直接、被害を受けることとなります。また、設備的、物理的な問題は生じずとも、休業等を余儀なくされるという特徴があります(我々が2020年に経験したとおりです。)。

 これらに対処するためには、会社の施設ごと(オフィス、工場、倉庫、物流拠点、取引先の施設等)に、感染リスクについて検討することも必要になります。

 他の従業員等と「密」な状態になる者らが多数いる施設において、感染者が1人でも発生した場合、その他の者らも濃厚接触者として自宅待機等が必要となる場合があります。その場合、稼働人員が不足し、通常業務を行うことが困難となる可能性があります。

 そのようなリスクが顕在化した場合に、事業継続が困難となると評価するのであれば、そこから逆算して当該施設における「密」な状態を解消する必要性があるといえます。このような各施設における感染リスクや感染による支障の大きさを評価し、一定の施設における「密」な状態を解消する等、感染リスクへの対処を計画していく、という観点が今後のBCPにおいて重要となるでしょう。

 また、既に我々が経験したように、感染拡大が生じてしまった場合には、テレワーク等の導入が必要となる場合もあります。テレワークへの移行のための手順や、労働法上の必要な手当等を確認しておかなければ、急な働き方の変更に会社が対応できないというリスクも想定されます。そのようなリスクの評価や対処、という観点が、コロナ以降のBCP策定、修正において必要となると考えられます。

(2021年1月 弁護士 池辺健太)

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