ベトナム進出を成功に導くポイントとは

知っておくべきベトナム情報   ベトナムの概要 ベトナム(正式名:ベトナム社会主義共和国)は、人口9,851万人※(2021年)、面積33.1万km2、公用語はベトナム語で、日本との時差は-2時間あります。南北に長く(約1,600km)、北部、中部、南部で特徴が異なります。 日本はベトナムと1973年に外交関係を樹立し、経済発展に関わる人材育成の為の技術提供や、交通や生活のインフラ整備の資金提供などを積極的におこなってきました。ベトナムにとって日本は最大の支援国のひとつであり、政治、経済、安全保障、文化・人的交流など幅広い分野で連携しており、親日である国民が非常に多くなっています。   ※『ベトナム総合統計局』より参照 ベトナム北部 ベトナム北部は、政治・文化の中心である首都ハノイがあり、政府や国連などの機関が集まっています。インフラ整備や大型商業施設などの都市開発が進んでおり、日系企業や外資系企業の進出増加に伴い在住外国人も増えています。近年は所得増加から、単なる製造拠点ではなく、消費市場としても注目を集めています。    ベトナム中部 ベトナム中部は、近年リゾート地として人気の高いダナンを中心に観光業やIT産業が集約しています。ダナンはハノイ、ホーチミンに次ぐ第3の都市となっており、近年では、賃料や人件費の安さから、日系企業の進出も少しずつ増加傾向にあります。今後、新たな生産・開発拠点や大型商業施設、ホテルなど多くの企業の進出が見込まれています。   ベトナム南部 ベトナム南部は、ベトナム最大の商業都市ホーチミンを中心に商業および観光業が活発におこなわれています。ベトナム経済を牽引する都市として発展しており、日系企業をはじめ外国企業は南部に多く進出しています。現在では、都市開発・経済発展が進み、外資系ホテルや高層オフィスビル、大型商業施設、分譲マンションが建設されています。   ベトナムの商習慣に対する3つの対策 ベトナム人・ベトナム企業の商習慣や傾向を知っておくことは、ビジネス上のトラブルを事前に防ぐ為に重要です。   ① スピーディーな意思決定 日本人は、極力失敗のリスクを減らそうと計画や事前準備に長い時間をかけます。一方、ベトナム人は、直感的に物事を捉える傾向があり、トップダウンでスピーディーに実行に移していきます。その為、日系企業は計画の策定等の事前準備に時間をかけ過ぎているという印象を抱かれる傾向があります。 また、ベトナム人・ベトナム企業は、短期的な利益回収を求める傾向があり、長期的・安定的な利益よりも、投資額の早期回収に重点が置かれます。 このように仕事の進め方についても違いがあることから、なるべく意思決定権のある人が商談に参加する、方向性をあらかじめ決めて商談に臨むなど、スピーディーな取引を心がけましょう。    ② 報告・連絡・相談の徹底 日本では基本となっている報告・連絡・相談が、一般的に海外は、希薄な傾向です。ベトナムも例外ではありません。そのため、ベトナムに子会社のある日系企業でも、現地の事業状況についての適切な報告がなく、会社の状況がみえなくなってしまうこともしばしば見受けられます。また、取引相手であるベトナム企業に問合せしたものの、なかなか返事がかえってこないということ等は日常的に起こります。 また、部下は上司の判断を仰ぐというビジネス上の常識も、ベトナムにおいてはいまだ浸透していません。その為、従業員が自分の判断で勝手に進めたり、1人で悩みを抱えこむケースもみられます。このような事態を招かぬよう、現地の従業員に対しては、研修や指導を通して、報告・連絡・相談の必要性を認識してもらい、コミュニケーションや仕事の進め方のルールやその体制を構築することが望まれます。   ③ 余裕をもったスケジュール管理 海外をはじめとする諸外国では、日本に比べて時間に正確に行動するという意識が一般的に希薄です。ベトナムでは、交通渋滞が日常化しているという事情もあり、ビジネスでも、集合時間や会議時間に10~30分遅れることが多くあります。また、納期遅れもしばしば発生するため、ベトナム現地にて製品の製造をおこなう場合には、こまめに進捗を確認し、納期を守ってもらうような働きかけが重要です。場合によっては、多少の遅れを見込んだ上でスケジュールを立てておくことも必要です。 また、ベトナム人は、家族との時間を非常に大切にします。ベトナムでの有給休暇取得率は100%に近く、年に1回以上は長期休暇を取得して、家族や親戚が集まる行事に参加するのが一般的です。仕事後の家族と過ごす時間も重視しており、基本的に残業はおこないません。定時までに業務が終わるよう仕事環境を整えるようにしましょう。 ベトナムが注目される3つのメリット   ① 市場の成長性 ベトナムでは、2007年のWTO加盟以降、貿易の自由化が進んでおり、外資に対する各種規制緩和も進んでいます。ベトナムの人口は増加し続けており、国民1人当たりのGDPも成長し続けており、安定した経済成長を続けている点など日系企業にとって魅力となっています。法人税の優遇制度も実施されており、積極的にベトナム進出を後押しする体制ができていることもメリットになっています。また、政治的な安定度も高いことから、投資対象として有望視されています。 ※グラフのデータは『世界銀行』参照 ② 安価な労働力 消費市場としての成長性とともにベトナム進出の主要因として挙げられるのが、人件費の安さです。賃金水準は、物価上昇もあって企業は年々ベースアップをおこなっており、以前よりかなり上がってきているものの、それでも中国やタイ等と比較すると低くなっています。低賃金の国々の中でも比較的インフラが整備されており、多くの日系企業がベトナムに進出しています。 ※グラフのデータは『JETRO(日本貿易振興機構)2022年度 海外進出日系企業実態調査』参照 ③ 優秀な人材 ベトナムは、平均年齢が31歳と若い上に、今後も人口増加が続き、2025年には1億人を突破する見込みとなっています。識字率も95%と非常に高く、勤勉で向上心が強く、新しい知識を貪欲に吸収し、かつ真面目に仕事に取り組みます。政府も外国語・情報技術の強化、教員の質の向上、教育のデジタル化を図っており、国を挙げて教育にも力を入れています。技術力やITリテラシーも高く、質の高い仕事を期待することができます。若くて優秀な人材が多いこともベトナム市場の魅力です。   ※『JETRO(日本貿易振興機構)2021年1月 ベトナム教育(EdTech)産業調査』参考   ベトナム進出のデメリット3つ    ① インフラの未整備 ベトナムは、国を挙げてインフラ整備に取り組んでおり、インフラ状況が改善されつつありますが、それでも十分なインフラ整備がなされているとは言いづらい状況です。道路の未整備などで渋滞や事故に巻き込まれるケースもあります。現在、様々な計画が進められてはいますが、資金調達やプロジェクトの管理能力が不十分で、計画通りに進んでいない案件も発生しています。 また、近年の著しい経済発展に伴い、都市部や工業地帯を中心に大気汚染や水質汚染が年々悪化し、健康被害や自然の生態系への影響も出ています。ベトナム政府は環境問題に対する罰則強化をおこなっています。   ② 不透明な法制の運用 ベトナム政府は、国際専門家の意見や提案を取り入れ、法制度の整備に努めています。各種法制の運営についても、管轄当局や処理手続き、受付窓口をおり簡素化、効率化する体制の構築が進んでいます。 しかし、法制度の整備は進んでいるものの、裁判例の蓄積・公開が十分でなく,具体的な指針となるものが不足しており、当局や裁判所の裁量が大きくなっているケースもあります。各省や担当員によって解釈が異なることもしばしばある為、信頼できる第三者からのアドバイスや客観的な判断を仰いだほうがよいでしょう。   ③ 管理職クラスの人材確保が困難 ベトナムは人口ピラミッドにおいて、若年層が多く、労働力は豊富です。一方で、ビジネス経験の豊富な管理職といった人材を確保することは困難となっています。ある日本企業では、日本へ留学するベトナム人が多いことに着目し、日本で技術を学んだ技能実習生や就業経験のあるベトナム人などが帰国した後、ベトナム拠点で採用するといった対策をしています。    現地日系企業の動向 ベトナムには3つの日本商工会議所があり、日本企業の活動支援をしています。この日本商工会議所の会員企業数がベトナムに進出している日系企業数として参考にされることが多く、3つ合わせて約2,000社が登録されています。実際には会員になっていない日系企業もいますので、実態はもっと多く日系企業が進出しているといわれています。   ベトナム北部(ハノイ):ベトナム日本商工会議所     801社 ※2023年2月時点 ベトナム中部(ダナン):ダナン日本商工会議所      210社 ※2022年6月時点 ベトナム南部(ホーチミン):ホーチミン日本商工会議所 1,048社 ※2023年2月時点   2022年度のJETRO(日本貿易振興機構)調査結果によると、今後1~2年の事業展開の方向性で、拡大と回答した日系企業の割合は、インド、バングラデシュに続いて、ベトナムは3番目と高い水準を示しています。 ※グラフのデータは『JETRO(日本貿易振興機構)2022年度 海外進出日系企業実態調査』参照   失敗しないベトナム進出のポイント3つ   ① リスク管理 一度失敗してしまうとコストと労力もかかる為、失敗しにくいスキームを構築することは大切です。可能な限りリスクを低減させてから、そのリスクの中で勝負をしていくことが重要です。 進出といっても、様々な進出形態があります。現地に拠点を構える場合は、現地法人設立、M&Aでの現地法人買収、現地パートナーとの合弁、支店設立などがあります。また現地に拠点を設けない場合であっても、輸出取引、販売代理店、フランチャイズ、製造委託、EC活用、ライセンス契約、技術提供(指導)契約など様々です。それぞれの形態ごとに、現地企業との組み方、契約スキームなども異なります。 これだけ多くの選択肢の中から最適なスキームを構築するためには、現地の法律だけでなく、取引の実状や起きがちなリスクを踏まえたリスク管理の視点が不可欠です。    ② 知的財産や営業秘密保護の戦略 海外では、知的財産権の侵害(模倣品)、技術漏えいなど、国内では想定しづらい様々な問題に直面することがあります。安定した収益を上げるためにも、知的財産権のみならず営業秘密管理や、契約スキーム自体の組み方などを通じて、適切に実践しておくことが重要です。   ③ 現地の法規制や商習慣の把握 不明確な現地の法規制、思わぬ労働慣習や商習慣があります。また急に制度が変わったり、その運用に変更が生じたりと、予定していた計画が大幅に狂ってしまうこともありますので、これらの情報を事前に把握した上で計画を立てる必要があります。そのためにも最新の現地法規制や運用、商慣習などの実践的なアドバイスを受けておくことが重要です。       明倫国際法律事務所では、ベトナム(ハノイ・ホーチミン)にも事務所を構えております。日本人弁護士はもちろん日本語ができるベトナム人弁護士、パラリーガルが常駐し、迅速的かつ適切に対応できます。今回、記載した内容のサポートはもちろんのこと、初期の検討段階から実際の設立、その後の運用支援まで、ワンストップで対応しています。また、コンサルティング会社では担うことのできない、発生したトラブルの解決、紛争対応などの対応は、もちろん未然に防ぐための企業戦略のコンサルティングサポートも可能です。「海外進出や販路拡大について広く知りたい」「現地の投資環境について全体像を掴みたい」等のご相談も承っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。