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ベトナムの進出のための情報や、コンプライアンスや契約・紛争などの進出後の問題、基本的な規制や最新の法改正など幅広い情報を提供します。

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ベトナムの付加価値税(VAT)に関する改正案について

2022/06/15  

                                                                                                                                                                                        ホーチミン支店代表弁護士 盛一也

                                                                                                                                                                                         パラリーガル Truong Vu Giang

 

 ベトナムの付加価値税(VAT)について、新たな内容等を設けた政令No.15/2022 NĐ-CP(政令15)が施行された後、多くの企業が、減税の対象となる商品やサービスのインボイスの作成について困難に陥っている。そのような困難を解消するために、2022年3月30日に財務省が、政令15の第1条4項の改正政令草案を政府に提案した。

 

現行政令15の1条4項の規定は、以下の通りである:

 

「事業は、付加価値税(VAT)の減税の対象となる商品・サービスに対して、個別のインボイスを作成しなければならない。 事業が付加価値税減税の対象となる商品・サービスに対して別途インボイスを発行しない場合、付加価値税の減税を受けることができない。」

 

 すなわち、減税の対象である商品・サービスを提供しても、当然減税を受けられるわけではない。言い換えれば、8%税率が適用されるためには、企業は、8%税率が適用されるものについて特定したうえで、インボイスを作成しなければならない。

 

 付加価値税の減税は、本来であれば、需要を喚起するためのもので、企業の新型コロナによる影響後の事業活動をサポートする目的がある。ただし、政令15の上記の規定により、逆に企業の支出費用が増加する可能性があると多くの企業が主張している。具体的には、会計処理時間の費用とインボイスの印刷・使用費用である。 同じ顧客に対し、多くの異なる税率(5%、8%、10%)で1つのインボイスのみを作成する代わりに、企業は現在、2つのインボイスを作成する必要がある。1つは税率8%で、もう1つは他の税率(5%、10%)が適用される製品向けである。例えば、コンビニなどで、同じ顧客に野菜、肉、お酒、シャンプーを販売する場合、以前であれば、これらの製品を全部同じインボイスで記載し、顧客に渡せばよかった。しかし、政令15が有効となった後、野菜と肉は減税対象製品で、お酒とシャンプーは減税対象外の製品なので、政令15の1条4項によれば、2つのインボイスに分けて作成しなければならなくなった。したがって、企業は、事務手続上の煩雑さを回避するために、VATの多数の種類を1つのインボイスのみで反映できる形式に変更するよう求めている。当該変更は、企業の国家に対する税務に影響することもなく、複数のインボイスの発行にかかる費用を節約・削減できる。そして、これにより、商品・サービスプロバイダー及び消費者が、政府の減税政策において実質的に利益を得られるものである。

 

 各税務署も、多くの企業が主張している上記と同じ意見を述べている。 インボイスに各種類の税率が明確に示され、企業が依然として納税義務を果たしている限り、2種類のインボイスを作成しなくてもよいとすべき旨主張している。

 

 このような各企業及び税務署の意見を取り上げ、財務省は、以下の通り、政令15の1条4項を変更するよう政令草案を政府及び各関連省庁に提案している。

 

「事業が、異なる税率で商品を販売又はサービスを提供する場合、インボイスには、商品・サービスごとの税率又は減税されたVAT計算率を明確に記載しなければならない。」

 

すなわち、減税対象製品・サービス向けの個別インボイスを発行することの代わりに、本規定によれば、企業は、異なるVAT率を明確に反映すれば、同じインボイスの発行のみで足りることになる。そして、政令15が施行された2022年2月1日以来、個別インボイスをまだ発行していない企業のため、政令草案の遡及適用が規定されている。具体的には、2022年2月1日から、本政令(改正政令)が有効となる日まで、本政令の規定と同じ対策を実施した場合、インボイスを改めて変更等する必要はなく、税務・インボイス規定の行政違反に関する制裁を受けることもないことになる。

 

 本政令草案について、計画投資省、工商省、各省の人民委員会等関連機関が概ね賛成しており、それらの内容を政府が承諾することが待たれる状況である。草案が施行された場合、企業の費用削減と事務作業の効率化に大きく貢献すると期待されている。