ベトナム進出情報Q&A

ベトナムの進出の際のキーポイントや注意すべき点などをQ&A形式で
お伝えします。

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ベトナムで契約が守られなかったときに取るべき対策はどのようなものがありますか。 ベトナムで契約が守られなかったときに取るべき対策はどのようなものがありますか。

ベトナムで契約が守られなかったときに取るべき対策はどのようなものがありますか。

紛争解決制度・トラブル解決
ベトナムで契約が守られなかったときに取るべき対策はどのようなものがありますか。 ベトナムで契約が守られなかったときに取るべき対策はどのようなものがありますか。

ベトナムにおける契約違反への対応は、主にベトナム民法(91/2015/QH13)及び商法(36/2005/QH11)に一般規定として置かれています。

契約違反が生じた場合、民法上、違反の程度に応じて契約条項の修正、契約の解除、契約の一方的終了などがあります。契約の一方的終了は日本民法にない制度であり、解除との違いを知っておく必要があります。また、併せて損害賠償の請求も検討の対象となります。

まず、契約の違反が軽微である場合や、相手方との取引関係・信頼関係などから形式的には契約内容に違反しているものの、取引関係自体は維持したい場合、新たに契約を締結するのではなく、既存の契約の修正という形で契約違反に対応することが考えられます。契約の修正については421条に定めがあり、特段契約の修正に対して要件などが定められているものではありません。契約の修正に類似するものとして、事情変更時の契約修正権があります(民420条)。420条は、契約締結後の契約履行について、事情変更により修正が生じた場合の条文であり、損害等軽減措置を講じることができず、契約の履行が重大な損害をもたらすなどの諸要件を満たす場合には契約内容の再交渉が認められています。

次に契約解除については、民法423条は、契約の解除権を発生させる契約違反が生じた場合、重大な契約違反が生じた場合、その他法令等の規定する場合を一般的な解除原因としており、ここでいう重大な違反とは、日本と同様、契約目的を達することができなくなる程度の違反とされています(同条2項)。なお、解除権を行使した場合、解除権者が損害賠償義務を負うことは原則としてありませんが(同条1項)、契約解除前に通知を行わなければ、解除により相手方に生じた損害を賠償する旨法定されている点に注意が必要です(同条3項)。

また、民法上は履行遅滞解除(法424条)、履行不能解除(法425条)については日本とほぼ同様と思われます。なお、履行遅滞解除には、その時期に履行されなければ契約目的を達せられない場合のような日本でいう定期行為に対する遅滞解除も含まれています。その他、日本にない契約解除類型ですが、代替性のない契約目的物が滅失又は損傷した場合の解除権も認められています(法426条)。このようにして発生する解除権の行使ですが、解除効は日本における解除の遡及効と基本的に異なりませんし、解除権の行使により損害賠償請求が妨げられることもありません(法427条1項、2項及び3項)。

契約の一方的終了は428条に定めが置かれ、契約上の義務に対する重大な違反が生じた場合に、自身の契約上の義務の履行を終了させる制度として規定されています(同条1項)。同条2項で終了についての通知を出さなければ損害賠償義務が生じ、3項により履行済みの義務部分については清算を請求できるなど、上記解除と類似した制度ですが、法的には契約が遡及的に消滅するのではなく、終了させた時点から将来的に消滅する点に差があると言えます。

契約違反に対する金銭賠償については、違約罰の定めが契約において定められている場合は違約金を請求でき、契約義務に違反したことで損害が生じている場合はその賠償を求めることもできます(法360条)。なお、債務不履行を理由とする損害賠償請求については、少なくとも過失が必要であり、日本と同様に過失責任主義が採用されています(法364条)。損害賠償の対象は物質的損害と精神的損害に区分されており(法361条3項及び4項)、それぞれの損害項目について請求が可能です。ただし、損害賠償請求時に、損害軽減義務が明文にて賠償請求者に課せられている点に注意が必要です(法362条)。

上記の民法上の定めに対して、商法上の契約関係においては、違約罰及び損害賠償範囲について修正が行われています。商法301条では、違約罰の上限が不履行債務の対価の8%が限度とされており、これを超える金額を違約罰として設けることができません。他方、損害賠償範囲ついては302条にて、消極損害に限られず、逸失利益も請求できるとされています。民法上の損害賠償においては、日本と異なり契約の履行があれば得られたであろう逸失利益については物質的損害の範囲に含まれないと解されていますが、商法においては損害賠償の範囲が拡大された結果、逸失利益についても損害賠償を請求できるとされています。

法的主張をまとめた上で、当該請求を行うために、①当事者間の交渉、②第三者(弁護士)による交渉立ち合い、③和解人による調停立ち合い、④仲裁裁判、⑤訴訟のうちいずれかの方法を選択する必要があります。①から④まで若しくは①から⑤までの選択を段階的に行うことも可能です。また、仲裁を利用する場合は、必ず当事者の合意(契約に既に定めがあるか、または紛争発生後の合意)が必要とされている点にご留意ください。