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コラム

COLUMN

いわゆる「ステマ」規制について

企業経営・販売・広告

2023.11.21

執筆者:弁護士 堀田 明希

 景品表示法(以下、「景表法」といいます。)第5 条第3 号を受け、消費者庁は、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」等を指定しました。
 この表示とは、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」となります。これは、ステルスマーケティング、いわゆる「ステマ」を意図したものであり、令和5年10月1日以降、表示の方法次第では景表法が禁止する不当な表示に該当することとなります。

 前提として、ここで問題となる表示は「外形上」第三者の表示のように見えるものです。
 例えば、インフルエンサー等が企業の依頼を受けて商品を紹介するケースは、「外形上」第三者の表示に見えますが、企業が表示内容の決定に関与したと認められる、つまり、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合には、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」となると解されます。
 ここで「表示内容の決定に関与した」と判断される場合としては、
・ 第三者を装って行う表示(従業員や子会社に表示させる場合も含みます。)
・ 第三者に、SNS やEC サイトのレビュー機能を利用して行わせる表示
等が例示されています。
 注意しなければならないのが、「ある内容の表示を行うよう明示的に依頼・指示していない場合」であっても、第三者に提供する対価の内容や目的、関係性等に照らし、「表示内容の決定に関与した」と判断される場合があることです。
例えば、
・ SNS での表示を依頼しつつ、当該商品のサンプルを無償提供する場合
・ 当該商品等の表示をすることが、第三者の経済的利益につながることを暗示する場合
等が、これに該当する可能性があります。
 なお、ここで考慮されるのは「表示内容の決定に関与した」か否かであり、「表示に関与した」ことではないため、たとえば第三者が自らの判断でレビューしたり、懸賞に応募したりするために商品の情報を拡散することは、「表示内容の決定に関与した」ことには該当しないと解されています。

 「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」に該当する場合において、「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難である」にも該当すると不当な表示にあたります。
 「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難である」については、
・事業者の表示が記載されていない
・「 広告」と表示していても、第三者としての感想であることを装う
・事業者の表示が短時間、見にくい
・ 事業者の表示を大量の#(ハッシュタグ)に埋没させる
等が該当するとされており、事業者の表示(広告)であることが明確にわかる記載が求められています。

 これまで、第三者にこっそり依頼して宣伝してもらう典型的な「ステマ」は、少なくとも法律上は明示的に禁止されていませんでした。
 しかしながら、令和5 年10 月1 日以降は景表法の禁止する不当表示に該当することとなります。これを機に、自社の広告に問題がないか見直しをしていただくことをお勧めいたします。

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