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コラム

COLUMN

テレワーク実施の際の注意点

人事労務

2021.08.04

昨今の新型コロナウイルス対策の一環として、テレワークを導入する企業が増えていますが、「セキュリティの問題」や「労務管理上の不安」から、テレワーク導入に躊躇する企業も多いようです。そこで本稿では、この点について解説をしたいと思います。

1.テレワークとセキュリティ

 テレワーク実施において最も大きな「リスク」は、情報漏洩や外部からのサイバー攻撃などの情報リスクでしょう。最近では、単なる情報の送付ミスなどだけでなく、中小企業であってもサイバー攻撃による情報漏洩や詐欺などの犯罪被害が増加していますので、注意が必要です。

 このような観点から、テレワーク導入にあたっては、以下のような点に注意する必要があります。

①教育啓発活動

 これを機会に、情報管理や漏洩リスクの研修などを行い、コンプライアンス意識の向上を図ることが望まれます。

②技術的対策

 貸与PCや端末について、アプリケーションのインストール制限、フィルター設定やアクセス制限、ウイルス対策の実施などを行う必要があります。私用端末の業務利用は、事前許可制とし、許可にあたっては、前述のような必要な技術的な対策を講じられていることを確認する必要があります。

また、各種OSやアプリケーションなどは、順次セキュリティホールの対応がなされていますので、常に最新のバージョンとなるように確認が必要です。

なお、これらの対策費は、会社負担とすべきでしょう。

③社外から社内システムを利用する場合の留意点

 情報漏洩対策としては、各勤務者が所持している端末には情報を記録せず、リモートでサーバにアクセスするなどして作業をすることが効果的です。こうしておけば、端末が紛失や盗難にあっても直ちに情報漏洩にはつながりません。

 ただし、IDやパスワードなどが流出するとサーバに侵入されるリスクがあります。そこで、パスワード情報を端末に保存しないように管理を徹底する、パスワードは定期的に変更するなどの対策をした上で、万一端末が紛失または盗難にあった場合には、直ちに当該端末(利用者)のアカウントを停止するなどの措置がとれる連絡体制を構築しておくことが望ましいでしょう。

2.テレワークと労働管理

 テレワークであっても労働関係法令はもちろん適用されますので、労働時間管理やハラスメントの防止なども含めた対応が必要です。

①労働時間管理

 労働時間の記録は、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録によることが必要です。テレワーク時の勤怠管理や在籍管理等を行うITツールの導入なども検討すべきでしょう。ただし、このような方法を取ることができない場合には、従業員からの自己申告によることも可能です。始業時・終業時にメールや電話で上長に連絡する、終業時のメールに作業日報として1日の業務内容を在宅勤務者に提出させる、といったことが考えられます。

 なお、一定の場合には事業場外みなし労働時間制の適用も可能です。

②時間外手当管理

 テレワークであっても、残業を命じた場合は残業代の支給が必要です。深夜や休日の割増賃金の支払いの対象ともなりますので、労働時間をきちんと管理し、時間外労働の事前許可制を徹底するなど、適切な対応が必要です。

③費用負担

労働者がテレワークに要する通信費等の費用を負担することもあり得ます。この場合、費用の負担割合や精算方法などについて事前に労使で十分に話し合い、就業規則等に定めておくことが望ましいといえます。 特に、労働者に情報通信機器、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定しなければならないこととされていますので注意が必要です。

(2020年7月)

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