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コラム

COLUMN

改正電気通信事業法への実務上の対応について

一般企業法務等

2024.03.13

執筆者:弁護士 盛一也

1 はじめに

 令和5年6月16日施行の電気通信事業法(以下「本改正法」といいます。)は、利用者にSNS やメタバースなどのいわゆる「場」の提供や、利用者への動画配信などの情報提供、チャットツールといったIT サービスを提供している事業者に適用され得るものであるため、その改正の中でも重要になる「外部送信規律」について本稿で外観します。

2 「外部送信規律」の概要

 本改正法では、利用者が安心して電気通信サービスを利用できるよう、「外部送信規律」という制度が新たに導入されました。「外部送信規律」は、利用者のスマートフォンやパソコン等の端末から利用者が気づかないうちに情報(Cookie 等を含む。)を収集するような機能のあるウェブサイトやアプリを提供している事業者が対応しなければならない規律です。

3 「外部送信規律」で求められること

 「外部送信規律」の対象者(後述)は、「利用者の電気通信設備を送信先とする情報送信指令通信」を行おうとするときは、下記の①から③の事項について、i からiii の対応を取る必要があります。

【対象事項】
 ① 送信されることとなる利用者に関する情報の内容
 ② 当該情報を取り扱うこととなる者の氏名又は名称
 ③ 当該情報の利用目的

【必要な対応】
 ⅰ当該利用者に通知する、または当該利用者が容易に知り得る状態に置く
 ⅱ利用者の同意を得る
 ⅲ利用者の求めに応じて停止できるようにする(いわゆるオプトアウト措置)

 なお、「利用者の電気通信設備を送信先とする情報送信指令通信を行おうとするとき」とは、利用者の端末に外部送信を指示するプログラム等を送信する場合が念頭にかれています。また、「利用者に関する情報」とは、利用者の端末に保存された閲覧履歴、システム仕様やシステムログ、Cookie や広告ID 等の識別符号、利用者の氏名、利用者以外の者の連絡先情報など、幅広い情報が含まれます。

4 「外部送信規律」の対象者か否か

 「外部送信規律」の対象者になる者は、ア電気通信事業者またはイ下記のような電気通信役務を提供する者のいずれかに該当するものとされています。
 まず、ア電気通信事業者とは、登録または届出が必要な電子通信事業を営んでいる者を指しますので、自社が登録又は届出をしているかにより容易に確認ができます。
 次に、イの電気通信役務を提供する者とは次のような役務を提供する者とされています。

  • 利用者間のメッセージ媒介など他人の通信を媒介する電気通信役務
  • SNS、電子掲示版、動画共有サービス、オンラインショッピングモール等
  • オンライン検索サービス(Google検索・Yahoo!検索等)
  • ニュース配信、動画配信、その他オウンドメディア等の各種情報のオンライン提供(自己の情報発信のために運営する場合を除く。)

5 まとめ

 本改正法の概要を見てきましたが、自社が外部送信規律の対象者にあたるか、又はあたる場合に具体的に何をすべきかお悩みがあれば、当事務所までご相談いただければ幸いです。

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  • 本原稿は、過去に執筆した時点での法律や判例に基づいておりますので、その後法令や判例が変更されたものがあります。記事内容の現時点での法的正確性は保証されておりませんのでご注意ください。

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