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コラム

COLUMN

相隣関係のルール

一般企業法務等

2023.09.06

執筆者:弁護士 小栁美佳

令和5 年4 月1 日施行民法により改正された相隣関係のルールについて、ご紹介します。

敷地使用権(改正民法209条1項)

 旧民法は、隣地使用の目的として「障壁又は建物を築造、修繕」しか挙げていませんでしたが、改正民法では、「障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕」、「境界標の調査又は境界に関する測量」、越境した「枝の切取り」と目的が追加されました。
 ただし、隣地を使用する場合には原則隣地所有者(使用者含む。以下同じ。)への事前通知が必要ですし、使用により隣地所有者に発生した損害の賠償義務は負います。また、旧民法では「隣地の使用を請求することができる」となっていた文言が「隣地を使用することができる」に改正されたことから、文言上は隣地所有者の承諾がなくとも使用できるようにも読めますが、承諾なく隣地を使用することは自力救済であって許容されないと解されています。そのため、改正後も隣地所有者の承諾を得ることは必要であり、承諾を得られない場合は判決を得る必要があると考えられていますので、ご留意ください。

ライフラインのための設備設置等(改正民法213条の2)

 旧民法では、電気ガス水道等のライフラインのために他人が所有する土地や設備を使用することを認めた規定がありませんでしたが、改正によりこれら使用権が認められました。ただし、隣地使用権と同じく、土地や設備所有者の承諾がないまま使用する自力救済までは認められませんので、承諾がない場合は判決を得る必要があると考えられています。

越境した枝の切除(改正民法233条)

 旧民法は、越境した竹木の根の切除はできるものの、越境した枝については竹木所有者に枝を切除させることができると定めるにとどまり、土地所有者自ら越境した枝を切除することまでは認めていませんでした。そのため、竹木所有者が越境した枝を切除しない場合は、枝の切除を命じる判決を得る必要がありました。
 改正民法では、竹木所有者に枝の切除を求めたにもかかわらず切除しないときや、竹木所有者を知らないときや行方不明のとき、急迫のときには、土地所有者自ら越境した枝を切除することができるようになりました。枝の切除については、隣地使用やライフラインの設備設置とは異なり判決によらずに枝を切除する自力救済を認めたものと考えられていますが、改正民法施行後の裁判の判断が出てくるのはこれからですし、自力救済が認められたとしても事情によっては損害賠償義務が発生しますので、安易な自力救済はお控えいただき、弁護士等専門家への事前相談をご検討ください。

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