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コラム

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Chat GPTの普及と生成AIのトリセツ

知的財産

2024.02.02

執筆者:弁護士 田中雅敏

 Chat GPT の急速な普及に伴い注目を集めている生成AI ですが、活用が急速に進んでいる一方で、様々な問題点があるのも事実です。生成AI をめぐる問題点は多岐にわたりますが、ここでは、とりわけ法的な観点から、生成AI と向き合うために知っておきたい、注意点をまとめてみました。

1.生成AI のコンテンツの検証をどうするか?

 生成AI が作成した文章には、不正確なものや誤っているものも多く、また、偏見や差別を助長する可能性もあります。さらに、技術的には、特定の政治的立場などを重点的に表示したり、あるいは表示しなくしたりといった、人為的な操作も可能です。
 したがって、自動生成されたコンテンツが「適正」なものかどうかは、なお自分で検証することが不可欠です。

2.他人の著作権を侵害しないか

 自動生成にあたって、他人の著作物をAI が利用する行為自体は、多くの場合、著作権法30条の4 によって、著作権侵害とはならない可能性が高いといえます。しかし、実際に生成AI がアウトプットしたコンテンツについては、他人の著作物(以下、「原著作物」といいます。)に「依拠」しており、かつ原著作物と「類似」している場合、著作権侵害となります。
 もっとも、このような点については、多くの場合、生成AI が何を「参考」にしてそのコンテンツを作成したかはわかりませんので、ソースにあたることができず、検証が困難となります。
 一方で、利用者が生成AI に何らかの指示を出して自動生成させた場合、つまり「○○風のデザインにしてほしい」、「○○風の音楽を作ってほしい」と言った指示を出した場合には、その「○○」の原著作物との類似性は、しっかりと検証する必要があるでしょう。

3. 生成AI が自動生成したコンテンツの権利は誰に帰属するか?

 著作権は、人の創作意図に基づく創作的寄与がある場合に発生する権利です。したがって、自動生成AI が完全に独自に生成したコンテンツには、著作権は発生しません。
 したがって、その場合、自動生成されたコンテンツを公開したところ、他人に無断で複製なされて使用されたというような場合は、著作権侵害に基づく主張が困難となります。このようなコンテンツについては、契約関係でしっかり定めるとか、利用できる範囲を限定するなどの対策が必要です。
 一方で、自動生成AI に対して、人間が創作的な意図をもって色々と指示をしたりした場合は、その結果生成されたコンテンツには、著作権が認められる余地があります。重要なコンテンツは、完全に自動生成AI 任せにせずに、著作権を確保しておくことが重要かもしれません。

4.秘密情報の漏洩

 生成AI を利用するにあたって、秘密情報をプロンプトに入力してしまったりすると、秘密情報の漏洩の問題が発生する可能性があります。いったん入力した情報については、公に利用されてしまう、という情報管理の意識を持って利用することが大切です。

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