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コラム

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ベトナム環境関連法

国際ビジネス

2021.07.02

現在ベトナムでは、資源・環境問題が国民及び政府から注目されています。これに関し、締結済みの国際環境保護条約等を誠実に履行するため、2014年にベトナム環境保護法が公布されています。この法律には、グリーン経済成長、気候変動の影響、環境安全などを含む各分野に関する規制や配慮が含まれています。この環境保護法に関しては、以下の政令が公布されています。

① 2016年5月15日付政令第41号(Decree No.41/2016/ND-CP)
ベトナム海域での科学研究を行う外国の組織・個人に対する許可付与の詳細規定が公布されました。
この政令では、ベトナム海域での科学研究の許可付与と手順に関する一般規定を挙げ、また天然資源に深刻な損害を与え、汚染、環境悪化、海洋および島の生態系を引き起こす科学研究活動を特別に禁止するといったことが規定されています。

② 2016年7月1日付政令第60号(Decree No. 60/2016/ND-CP)
自然資源環境の分野における投資条件の規制が公布されました。
この政令は、以下を含む水資源、鉱物、環境保護の分野での事業投資の条件を規定しています。
・地下水掘削の訓練免許を付与される条件。
・水資源の基礎調査、水資源の計画に関するコンサルタントを行う組織の能力に関する条件。水資源許可の申請書類に提案と報告を行うコンサルタント組織・個人の能力に関する条件。
・鉱物探査を実施する組織の条件。
・廃棄物処理におけるバイオ製品の取引の条件。
・有毒で感染性の物質である危険物の輸送の条件。
・有害廃棄物処理許可を付与される条件。

③ 2016年11月16日付政令第154号(Decree No. 154/2016/ND-CP)
排水の環境保護料に関する政令
この政令は、排水の環境保護料金の管理と使用に関する内容を規定しています。旧規制と比較して、主要な変更点は、生活と産業の排水に関する環境保護料を変更して環境保護対策費を確保するとともに、政府が領収した年間の環境保護料の金額を国民に公表することが規定されています。工場排水などの関連事業者は注意が必要です。

④ 2017年11月15日付政令第124号(Decree No. 124/2017/ND-CP)
石油・ガス活動への外国投資に関する政令
この政令では、投資の準備または外国での石油・ガスプロジェクトの実施のために、投資家はベトナム、開催国または第三国で事業会社を設立することができるといったことが規定されています。

⑤ 2018年10月5日付政令第136号(Decree No. 136/2018/ND-CP)
天然資源環境の分野における事業投資の条件に関する法令の規定を修正する法令
この政令では、政府は、事業投資の102/163条件を修正し、制限を原則として廃止しました(天然資源環境分野での事業投資の62%が関連することになります)。この改正により、天然資源環境の分野への事業投資が容易になり、この分野における投資を促進することが期待されます。

上記以外にも、ベトナム政府による、外国の環境保護技術・基準等の積極的な導入を図る施策が実行されています。

まず、自然資源環境省により、2019年8月30日付自然資源環境省決定第2211号(Decree No. 2211/2019/QD-BTNMT)は国際統合の基準に従って、2019-2020年に、環境に関する国家技術基準システムの構築に関する計画を策定する決定が公布されています。
この計画の目的は、韓国の環境対策を参考に、国際基準に適合した国家環境技術基準システムを構築することにあります。ベトナム側は、韓国環境技術基準システムに関する資料等の収集、翻訳を行い、さらに韓国の専門家をベトナムに招聘してシステム構築について相談したり、韓国への代表団を組織し、韓国環境技術基準システムの開発かつ実施の経験を研究したりすることが予定されています。

また、ベトナムと日本は環境分野についての研究の協力を促進する予定です。2019年10月28日、天然資源環境戦略研究所は、日本環境評価協会(JEAS)と、ベトナムの環境影響評価の分野で協力覚書に署名しました。
この覚書では、双方は環境管理に関する法令、社会と環境分野における影響の分析、環境影響評価、環境評価に関する検定システムなどの環境分野で協力するといったことが合意されています。

ベトナムにおいても、環境は、国民の日常生活や国家の発展と密接な関係があることが認知されています。現在、ベトナムの法律は、環境改善・保護を図る方向で急速に整備されてきています。ベトナムでも、高度経済成長時期に様々な公害問題を経験した日本から、環境改善・保護技術を学ぶ重要性が指摘されています。今後、ベトナムに投資を検討する日系企業は、こうした環境面での取り組みを要求されると考えられますし、また、そのような技術やノウハウをベトナム側から期待されているとも言えるでしょう。

 (2019年12月)

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