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コラム

COLUMN

家族信託 活用のすすめ ~柔軟な資産活用や資産承継を自らデザインするために~

事業承継・相続・家族信託

2022.02.03

執筆者:弁護士 鶴 利絵

1.家族信託 とは? ~ 民事信託契約としての家族信託 ~

 家族信託とは、家族間で民事信託契約を締結し、財産の管理・活用・承継帰属までを契約内容に盛り込み、資産活用方法や資産承継内容をオーダーメイドする制度です。

2.家族信託にできることとは?

(1)後見制度に代わる財産管理・資産活用

財産の所有者が認知症等で判断能力・財産管理能力を失った場合に、後見人が本人に代わって財産管理や法律行為を行うことができる制度として、後見制度があります。しかし、後見制度は、本人の生活・医療・福祉の支援及び財産管理を行う目的のための制度であるため、例えば、後見人が管理する収益不動産の価値を増加させる増改築を行ったり、売り時の株式を売却するなどの投資を行ったりといった、財産を「活用」する行為はできません。

これに対して、信託は、財産の所有者が認知症等で判断能力・財産管理能力を失わずとも利用が可能です。そして、信託においては、財産所有者である「委託者」が設計した信託契約に定められた目的・管理方針に従って、「受託者」が財産の管理・運用等として、不動産事業のために不動産の増改築・購入・処分等を行ったり、金銭等預貯金を株式・投資信託等の金融商品として運用する等を行うことも可能です。

このように信託によって、委託者の意向に沿った財産の効果的かつ柔軟な活用が可能となります。

(2)相続の概念を超えた財産承継・事業継承の実現

相続では、遺言によっても二次相続以降の資産承継者を指定することはできません。また、例えば、事業承継等を目的として長子のみに株式や不動産を承継させようとすると、第二子以降の者に対する平等が図れないということもあります。

 これに対して、信託では、信託の設定により、財産が委託者の財産でなくなり、委託者の遺産として遺産分割の対象にもならないという特殊性があり、これを生かして確実かつ円滑に信託財産を承継することが可能です。例えば、当初の受益者を財産の所有者本人とし、当初の受益者が亡くなった後は第二受益者である配偶者や子どもが受益権を取得し、最終的には受託者に信託財産の所有権を帰属させるというように実質的に二次相続以降を指定したことと同様の結果を実現させることができます。  このように、信託によって、通常の相続では実現できない財産や事業の承継が可能となります。

3.様々な活用方法

家族信託は、家族・親族間において、財産の管理を引継ぎ、本人・家族等の生活を守り、あるいは当該財産を担う次の世代に確実に承継させる仕組みです。この仕組みを利用して、親なき後の障がい者や未成年の支援や、世代交代に伴う経営の安定確保などに配慮することも可能です。相続や事業承継を自らデザインするために、家族信託という手段もご検討ください。

(2021年7月執筆)

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