執筆者:弁護士 石井靖子
新型コロナウイルスの収束後、多くの海外観光客が日本を訪れ、福岡においても多くの外国人を見かけるようになりました。彼らから日本の豊かな食文化や人気商品の海外展開について要望を受けることが増えています。
日本は少子高齢化が進行する社会であり、国内市場のみでビジネスを継続することが困難になりつつあります。そのため、企業の成長戦略として海外進出も選択肢となりますが、現地の商習慣や文化に関する知識が不十分な場合、単独で海外へ参入することは難しく、コストもかかります。したがって、現地パートナーと協力し、ライセンス契約を締結して海外ビジネスを展開する方法が、より現実的かつ効果的と考えられます。
ライセンス契約とは、知的財産権(例えば商標、技術やノウハウ)など有する企業が、相手方に対してその権利の使用を許諾する契約をいいます。ライセンサーとなる日本企業は、外国企業から使用を許諾する対価としてライセンス料を受け取ることになります。
海外ライセンス契約を締結する場合には特有のリスクが伴うため、注意すべき重要なポイントを紹介します。
知的財産権の保護
知的財産権の保護は、海外ビジネスを成功に導くための重要な要素です。多くの企業でも人気商品の商品名やブランド名は商標登録していると思いますが、外国企業と契約を締結する際は、相手国で商標登録を行う必要があります。現地企業が先に商標を取得すると、日本企業はライセンス料を受け取ることができなくなるだけでなく、日本企業の商品名やブランド名で、現地においてよく似た商品を販売されても、それを差し止めることが難しくなりますのでご注意ください。
ノウハウなどの技術については、秘密保持条項を契約に明記し、適切な保護措置を講じる必要があります。インドネシアのようにノウハウを登録できる国もあるため、重要な技術については登録の検討を推奨します。
ライセンス料
ライセンス料には、契約を締結するときに支払ってもらうイニシャルフィーと、「売上の5%」など売上に連動して支払ってもらうランニングフィーなどいくつかの形態がありますので、ビジネスモデルに応じて決めることになりますが、外国企業と契約をする場合は、できるだけ前払いで支払いを受けることが重要です。後から支払ってもらえない場合、金額によっては法的措置をとることも難しく、泣き寝入りとなるリスクが高いからです。したがって、必ずイニシャルフィーをもらうように推奨しています。
また、支払い通貨の指定も重要です。日本円、現地通貨、米ドルなどの選択肢があり、国際取引では米ドルが比較的よく使用されます。なお、為替変動が収益に影響する可能性もありますのでご注意ください。
準拠法及び紛争解決方法
準拠法と紛争解決方法の選択も重要です。準拠法は契約解釈の基準となりますので、日本法を選択することが望ましいです。
紛争解決に関しては、国際仲裁が一般的に選択され、訴訟よりも迅速かつ柔軟な対応が可能です。
海外ライセンス契約は、海外展開に有効な手段ですが、様々なリスクを伴います。当事務所には国際ビジネスを支援する専門チームがありますので、海外展開をご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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