執筆者:弁護士 早崎裕子
昨今、交通事故における重傷死亡事故の発生件数は減少傾向にありますが、自転車が関連する事故の割合は横ばいから微増となっています。これを受けて、2024 年11月1 日から施行された改正道路交通法では自転車に対する規制が強化されました。
自転車は道路交通法上「軽車両」に分類され、自動車と同様の交通規制を受けますが、運転免許は不要で、小さな子供から運転できる便利な乗り物であるため、法令遵守の意識が希薄になりがちでした。しかし、特に対歩行者事故の場合、自動車と同様に危険な凶器となるため、以下で紹介する法改正も意識しながら、今後はより安全運転を心がける必要があります。
⑴ 反則金制度の導入
自転車の交通違反に対して、「青切符」による行政罰(反則金)が科されることになりました。このため、これまでは、事実上お咎めなしの状態だった信号無視や一時不停止、逆走などの交通違反が処分の対象になります。
⑵ 運転中のながらスマホの禁止
スマホを手に持った状態で、自転車に乗りながら、スマホで通話する行為やスマホの画面を注視する行為が新たに禁止され、罰則の対象となりました。自転車運転中のスマホ使用には6 か月以下の懲役又は10 万円以下の罰金が科されます。また、スマホ運転により、交通の危険を生じさせた場合には1 年以下の懲役又は30 万円以下の罰金が科されます。
⑶ 酒気帯び運転の規制
自ら自転車の酒気帯び運転をする場合のほか、酒気帯び運転をするおそれのある人に自転車を提供した場合も3年以下の懲役又は50 万円以下の罰金が科せられます。また、自転車を運転する者に酒類を提供したり、酒気帯び運転の自転車に同乗した場合も2 年以下の懲役又は30 万円以下の罰金が科されます。
⑷ 自転車運転者講習制度
一時停止違反をして、青切符を科され、その後3 年以内に信号無視が原因となる交通事故を起こした場合など、危険運転を繰り返す自転車運転者には都道府県公安委員会から講習の受講(3 時間・6000 円)が命じられます。命令に従わないと5 万円以下の罰金が科されます。
他方で、従前「原動機付き自転車」に分類されていた電動キックボードについては、2023 年7 月1 日から一定の基準を満たすものは「特定小型原動機付自転車」と定義され、16 歳以上であれば、運転免許がなくても運転ができるようになりました。
若者の自動車離れが進む中、自転車や電動キックボードなどの小回りが効く便利な乗り物が広く利用されるようになり、時代の潮流に沿って、法律も日々進化を遂げているという次第です。
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